A7075とは、超々ジュラルミンとも呼ばれるアルミニウム合金です。
合金成分は、亜鉛、マグネシウム、銅であり、アルミニウム合金の中で最高強度を誇ります。
耐食性に劣る欠点が有りますが、航空機をはじめ、強度の必要な機械部品やスポーツ用品などにも使用されています。
A7075の強度は?機械的性質まとめ
A7075の機械的性質を下記に示します。
- A7075-T6、-T651の機械的性質(目安値)
機械的性質 | 条件 | 値 |
---|---|---|
引張強さ[MPa] | 570 | |
0.2%耐力[MPa] | 505 | |
伸び[%] | 1.6mm厚(50mm) | 11 |
Φ12.5mm(5D) | 9 | |
ブリネル硬さ[HBS10/500] | 150 | |
疲れ強さ[MPa] | 160 |
ここにあるのはあくまで目安値で、JIS H4000(アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条)やJIS H4040(アルミニウム及びアルミニウム合金の棒及び線)などでは、材料寸法によって機械的性質が規定されています。
例えば、厚さ120~300mmの板では、引張強さが360MPa以上となっており、下表の値より大幅に低いのでご注意ください。
A7075の物理的性質
A7075の物理的性質は下表のとおりです。
- A7075の物理的性質
物理的性質 | 条件 | 物性値 |
---|---|---|
密度[g/cm3] | 質別:T6 温度:20℃ |
2.80 |
比重 | 質別:T6 温度:20℃ |
2.80 |
溶融温度範囲[℃] | 質別:T6 | 477~635 |
導電率[IACS%] | 質別:T6 | 33 |
熱伝導度[kW/(m・℃)] | 25℃ | 0.13 |
縦弾性係数(ヤング率)[GPa] | 質別:T6 | 70.7 |
横弾性係数[GPa] | (アルミニウムの標準値) | 26 |
ポアソン比 | (アルミニウムの標準値) | 0.33 |
線膨張係数[10-6/℃] | -196~-60℃ | 15.9 |
-60~+20℃ | 21.6 | |
20~100℃ | 23.6 | |
100~200℃ | 24.1 | |
200~300℃ | 25.9 |
A7075の成分
- A7075の化学成分[%]
Si | Fe | Cu | Mn | Mg |
---|---|---|---|---|
0.40以下 | 0.50以下 | 1.2 ~2.0 | 0.30以下 | 2.1~2.9 |
Cr | Zn | V,Bi,Pb,Zr,Niなど | Ti | その他 | Al | |
---|---|---|---|---|---|---|
個々 | 合計 | |||||
0.18~0.28 | 5.1~6.1 | Zr+Tiは0.25%以下としても良い | 0.20以下 | 0.05以下 | 0.15以下 | 残部 |
A7075の耐食性は?用途と使い方
最後にA7075材を機械部品に使用する際の一般的な注意事項を挙げます。
合金 | 質別 | 耐食性 | 耐応力腐食割れ性 | 成形性 | 切削性 | ろう付け性 | 溶接性 | 鍛造性 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ガス | アルゴン | 抵抗 | ||||||||
7075 | T 6 | C | C | D | B | D | D | C | B | D |
優:A→B→C→D:劣
A7075の耐食性
A7075は日本で開発され第二次世界大戦でゼロ戦に使用されたことは有名です。
アルミニウムに亜鉛を入れた合金は強度が高いことが判っていましたが、応力腐食割れが問題となり使用できませんでした。これに、適量のクロムを追加することで、実用可能なレベルに改善しました。
しかし、それでもA7075が、応力腐食割れのリスクが高い合金であることは変わりません。
応力腐食割れは、引張応力を受けた状態で腐食環境に置かれた場合に発生します。
A7075で一般的なT6処理品は、特に応力腐食割れ速度が早い特性があります。
強度は下がりますが、応力腐食割れ速度を改善するため、過時効処理(T73)も使われます。
強度は質別・サイズ・温度で大幅に変わる
A7075はアルミニウム合金の中では最高強度ですが、熱処理をする質別のものだと特に、寸法や温度によって強度が大きく変わります。
寸法については、上記に示した通りですが、温度については下表のようになります。
- 7075-T6、T651の温度依存性
温度[℃] | 引張強さ[MPa] | 耐力[MPa] | 伸び[%] |
---|---|---|---|
-195 | 705 | 635 | 9 |
-80 | 620 | 545 | 11 |
-30 | 595 | 515 | 11 |
25 | 570 | 505 | 11 |
100 | 485 | 450 | 14 |
150 | 215 | 185 | 30 |
205 | 110 | 90 | 55 |
260 | 75 | 60 | 65 |
315 | 55 | 45 | 70 |
370 | 41 | 32 | 70 |
更に、アルミの場合、100℃以上の用途ではクリープにも注意が必要です。
アルミニウム合金の種類・特徴と選び方【機械設計者向け】
A1050A A1050 A1060 A1070 A1080 A1085 A1100A(A1N00) A1100 A1200 A1230A(A1N30)
A2011 A2014A A2014 A2017A A2017 A2018 A2024 A2025 A2030 A2117 A2124 A2218 A2219 A2618 A2N01
A3003 A3004 A3005 A3021 A3102 A3103 A3104 A3105 A3203
A4032
A5005 A5021 A5041(5N02) A5042 A5050 A5052 A5056 A5082 A5083 A5086 A5110A(A5N01) A5154 A5182 A5251 A5254 A5454 A5456 A5754
A6005A A6005C(6N01) A6060 A6061 A6063 A6101 A6151 A6181 A6262 A6463
A7003 A7005 A7010 A7020 A7049A A7050 A7075 A7178 A7204(7N01) A7475 A8011A A8021 A8079