ここでは、A5083を使って機械部品の設計するときに必要な情報として、化学成分や機械的性質、熱処理と物理的性質などJIS規格の内容を整理しました。
また、比重やヤング率などの物理的性質や、A5083を使う上で、使い方や加工性や溶接性などについての注意事項などについてもまとめました。
A5083とは
A5083 | 非熱処理型合金 | Al-Mg系合金 |
A5083は非熱処理合金の中で最高の強度があり、耐食性や溶接性も優れた材質です。
船舶、車両、低圧用タンク、圧力容器などに適します。特殊級のA5083PSは液化天然ガス貯槽用です。
A5083の強度は?機械的性質まとめ
A5083の機械的性質を下記に示します。
【A5083の機械的性質(目安値)】
材質 | 引張性質 | ブリネル硬さ (HBS 10/500) |
せん断強さ (N/mm2) |
疲れ強さ (N/mm2) |
|||
---|---|---|---|---|---|---|---|
引張強さ (N/mm2) |
耐力 (N/mm2) |
伸び(%) | |||||
1.6mm厚 (50mm) |
12.5mm径 (5D) |
||||||
5083-O | 290 | 145 | — | 20 | — | 170 | — |
5083-H321,H116 | 315 | 230 | — | 14 | — | — | 160 |
ここにあるA5083の機械的性質はあくまで目安値となります。実際にはサイズや条件により大幅に変化しますのでご注意ください。
規格値については、下記のJISにて、質別や材料寸法によってA5083の機械的性質が詳細に規定されていますので必要に応じてJISにてご確認ください。
A5083の物理的性質
A5083の物理的性質は下表のとおりです。
【A5083の物理的性質)】
物理的性質 | 条件 | 物性値 |
---|---|---|
密度[g/cm3] | 温度:20℃ | 2.66 |
比重 | 温度:20℃ | 2.66 |
溶融温度範囲[℃] | - | 574~638 |
導電率[IACS%] | 質別:O | 29 |
熱伝導度[kW/(m・℃)] | 質別:O 25℃ |
0.12 |
縦弾性係数(ヤング率)[GPa] | (アルミニウムの標準値) | 70 |
横弾性係数[GPa] | (アルミニウムの標準値) | 26 |
ポアソン比 | (アルミニウムの標準値) | 0.33 |
線膨張係数[10-6/℃] | -196~-60℃ | - |
-60~+20℃ | 22.3 | |
20~100℃ | 24.2 | |
100~200℃ | ー | |
200~300℃ | ー |
A5083の成分
A5083の成分は下記のとおりです。
【A5083の化学成分(%)]
Si | Fe | Cu | Mn | Mg |
---|---|---|---|---|
0.40以下 | 0.40以下 | 0.10以下 | 0.40~1.0 | 4.0~4.9 |
Cr | Zn | V,Bi,Pb,Zr, Niなど |
Ti | その他 | Al | |
---|---|---|---|---|---|---|
個々 | 合計 | |||||
0.05~0.25 | 0.25以下 | - | 0.15以下 | 0.05以下 | 0.15以下 | 残部 |
A5083の関連規格
A5083は下記のJIS規格で規定されています。
規格番号 | 規格名称 | A5083の規定有無 |
---|---|---|
JIS H4000 | アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条 | ○ |
JIS H4040 | アルミニウム及びアルミニウム合金の棒及び線 | ○ |
JIS H4080 | アルミニウム及びアルミニウム合金継目無管 | ○ |
JIS H4100 | アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材 | ○ |
JIS H4140 | アルミニウム及びアルミニウム合金鍛造品 | ○ |
A5083の使い方ワンポイント
A5083の特徴は下記のとおりです。
合金 | 質別 | 耐食性 | 耐応力腐食割れ性 | 成形性 | 切削性 | ろう付け性 | 溶接性 | 鍛造性 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ガス | アルゴン | 抵抗 | ||||||||
5083 | O | A | B | B | D | D | C | A | B | - |
優:A→B→C→D:劣
A5083とA5052の比較
5000番台の汎用材A5052と比較すると、A5083の方が強度が高いですが、マイナスポイント(欠点)は下記のような事項があります。
- 棒や管の流通量が少ない。(板材メイン)
- ろう付け性が悪い。
- 応力腐食割れの可能性が高くなる
A5083は固相線温度が低いので、ろう付け温度を上げられず、ろう付けの難易度は高くなります。
A5083は、2000番台や7000番台のCu含有合金と比較すれば応力腐食割れには強く、通常は問題にならないレベルですが、A5083でも加工度を上げて強度を増すと、応力腐食割れのリスクがでてきます。
A5052からA5083に切り替える場合は、上記のような点を評価することをおすすめします。
極低温とアルミ合金
A5083は、LNGのタンクに使用されていいます。
アルミニウムは、面心立方構造であることから、体心立方構造の鉄鋼(フェライト)と比較して低温脆性のリスクがありません。
さらに、アルミニウムは低温になるほど強度が上がる特性があります。
このような特性から、-162℃で貯蔵するLNGタンクにはアルミ合金は向いており、A5083は加工性や溶接性にも優れることから、この用途には適しているわけです。
アルミニウム合金の種類・特徴と選び方【機械設計者向け】
A1050A A1050 A1060 A1070 A1080 A1085 A1100A(A1N00) A1100 A1200 A1230A(A1N30)
A2011 A2014A A2014 A2017A A2017 A2018 A2024 A2025 A2030 A2117 A2124 A2218 A2219 A2618 A2N01
A3003 A3004 A3005 A3021 A3102 A3103 A3104 A3105 A3203
A4032
A5005 A5021 A5041(5N02) A5042 A5050 A5052 A5056 A5082 A5083 A5086 A5110A(A5N01) A5154 A5182 A5251 A5254 A5454 A5456 A5754
A6005A A6005C(6N01) A6060 A6061 A6063 A6101 A6151 A6181 A6262 A6463
A7003 A7005 A7010 A7020 A7049A A7050 A7075 A7178 A7204(7N01) A7475 A8011A A8021 A8079