A5052は、マグネシウムを合金成分として含む、最も汎用的なアルミ材で、加工性が良いことから自動車部品など幅広い用途に使用されています。
強度はアルミニウム合金の中では中程度ですが、加工性や耐食性のバランスが良く、溶接も比較的容易で、アルマイト処理も可能です。
板材としての流通が多くなっています。
A5052の強度は?機械的性質まとめ
A5052の機械的性質を下記に示します。
- A5052-H34の機械的性質(目安値)
機械的性質 | 条件 | 値 |
---|---|---|
引張強さ[MPa] | 260 | |
0.2%耐力[MPa] | 215 | |
伸び[%] | 1.6mm厚(50mm) | 10 |
Φ12.5mm(5D) | 12 | |
ブリネル硬さ[HBS10/500] | 68 | |
疲れ強さ[MPa] | 125 |
ここにあるのはあくまで目安値で、JIS H4000(アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条)やJIS H4040(アルミニウム及びアルミニウム合金の棒及び線)などでは、材料寸法によって機械的性質が規定されています。
A5052の物理的性質
A5052の物理的性質は下表のとおりです。
- A5052の物理的性質
物理的性質 | 条件 | 物性値 |
---|---|---|
密度[g/cm3] | 全質別平均 温度:20℃ |
2.68 |
比重 | 全質別平均 温度:20℃ |
2.68 |
溶融温度範囲[℃] | 全質別平均 | 607~649 |
導電率[IACS%] | 全質別平均 | 35 |
熱伝導度[kW/(m・℃)] | 25℃ | 0.14 |
縦弾性係数(ヤング率)[GPa] | 質別:H34 | 71 |
横弾性係数[GPa] | (アルミニウムの標準値) | 26 |
ポアソン比 | (アルミニウムの標準値) | 0.33 |
線膨張係数[10-6/℃] | -196~-60℃ | 16.2 |
-60~+20℃ | 22.0 | |
20~100℃ | 23.8 | |
100~200℃ | 24.8 | |
200~300℃ | 25.7 |
A5052の関連規格
A5052は下記のJIS規格で規定されています。
規格番号 | 規格名称 | 概要 |
---|---|---|
JISH4000 | アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条 | 板及び上についての化学成分、機械的性質、寸法許容差など |
JISH4040 | アルミニウム及びアルミニウム合金の棒及び線 | 棒及び線についての化学成分、機械的性質、寸法許容差など |
JISH4080 | アルミニウム及びアルミニウム合金継目無管 | 継目無管についての化学成分、機械的性質、寸法許容差など |
JISH4090 | アルミニウム及びアルミニウム合金溶接管 | 溶接管についての化学成分、機械的性質、寸法許容差など |
JISH4100 | アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材 | 押出形材についての化学成分、機械的性質、寸法許容差など |
A5052の成分
- A5052の化学成分[%]
Si | Fe | Cu | Mn | Mg |
---|---|---|---|---|
0.25以下 | 0.40以下 | 0.10以下 | 0.10以下 | 2.2~2.8 |
Cr | Zn | V,Bi,Pb,Zr, Niなど |
Ti | その他 | Al | |
---|---|---|---|---|---|---|
個々 | 合計 | |||||
0.15~0.35 | 0.10以下 | - | - | 0.05以下 | 0.15以下 | 残部 |
A5052の耐食性は?用途と使い方
最後にA5052材を機械部品に使用する際の一般的な注意事項を挙げます。
合金 | 質別 | 耐食性 | 耐応力腐食割れ性 | 成形性 | 切削性 | ろう付け性 | 溶接性 | 鍛造性 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ガス | アルゴン | 抵抗 | ||||||||
5052 | O | A | A | A | D | C | A | A | B | - |
5052 | H34 | A | A | B | C | C | A | A | A | - |
5052 | H38 | A | A | C | C | C | A | A | A | - |
優:A→B→C→D:劣
A5052の使い方
A5052は、アルミ合金の代表のような材質なので、最初に候補になるものです。
もう少し強度が必要なら、同じ5000番台のA5083や、6000番台のA6061などが候補になります。
切削性を良くしたければ快削合金のA2011、や硬度の高いA2017などが検討対象になります。
A5052の耐食性
A5052は、耐食性に優れています。
アルミニウムは本来とても腐食しやすい金属ですが、表面に大気中で表面に不動態皮膜ができるので、耐食性を得ています。
この不動態皮膜は、ベーマイト(AL2O3・H2O)とその下にアルミナ(AL2O3)からなるバリア層で構成されます。
このベーマイト層を人工的に厚くする、アルマイト処理(陽極酸化皮膜)を行うことで、更に耐食性を向上させられます。
A5052の溶接
A5052は銅を含まないため、アルミニウム合金の中では溶接しやすいとされます。
アルミニウムの融点は、660℃程度ですが、表面が酸化皮膜で覆われており、この酸化被膜の融点は、2,000℃以上です。
なので、溶接前にできるだけワイヤーブラシやヤスリなどで酸化皮膜を除去し、溶接中は酸化皮膜を破壊できるようアークの極性などを選びます。
アルミニウム合金の場合は、様々な方法の幅広い条件で溶接が可能な鉄鋼とは異なり、適切な溶接条件を設定する必要があります。
アルミニウム合金の種類・特徴と選び方【機械設計者向け】
A1050A A1050 A1060 A1070 A1080 A1085 A1100A(A1N00) A1100 A1200 A1230A(A1N30)
A2011 A2014A A2014 A2017A A2017 A2018 A2024 A2025 A2030 A2117 A2124 A2218 A2219 A2618 A2N01
A3003 A3004 A3005 A3021 A3102 A3103 A3104 A3105 A3203
A4032
A5005 A5021 A5041(5N02) A5042 A5050 A5052 A5056 A5082 A5083 A5086 A5110A(A5N01) A5154 A5182 A5251 A5254 A5454 A5456 A5754
A6005A A6005C(6N01) A6060 A6061 A6063 A6101 A6151 A6181 A6262 A6463
A7003 A7005 A7010 A7020 A7049A A7050 A7075 A7178 A7204(7N01) A7475 A8011A A8021 A8079