ここでは、A1100を使って機械部品の設計するときに必要な情報として、化学成分や機械的性質、熱処理と物理的性質などJIS規格の内容を整理しました。
また、比重やヤング率などの物理的性質や、A1100を使う上で、使い方や加工性や溶接性などについての注意事項などについてもまとめました。
A1100とは
A1100 | 非熱処理型合金 | 純アルミニウム |
A1100は純アルミ系の材料です。
強度が低いため構造材には向きません。成形加工性に優れ板材のプレス加工で深絞り成形に向きます。家庭用台所用品、照明器具や装飾品などに向いています。
A1100の強度は?機械的性質まとめ
A1100の機械的性質を下記に示します。
【A1100の機械的性質(目安値)】
材質 | 引張性質 | ブリネル硬さ (HBS 10/500) |
せん断強さ (N/mm2) |
疲れ強さ (N/mm2) |
|||
---|---|---|---|---|---|---|---|
引張強さ (N/mm2) |
耐力 (N/mm2) |
伸び(%) | |||||
1.6mm厚 (50mm) |
12.5mm径 (5D) |
||||||
1100-O | 90 | 35 | 35 | 42 | 23 | 60 | 35 |
1100-H12 | 110 | 105 | 12 | 22 | 28 | 70 | 40 |
1100-H14 | 125 | 115 | 9 | 18 | 32 | 75 | 50 |
1100-H16 | 145 | 140 | 6 | 15 | 38 | 85 | 60 |
1100-H18 | 165 | 150 | 5 | 13 | 44 | 90 | 60 |
ここにあるA1100の機械的性質はあくまで目安値となります。実際にはサイズや条件により大幅に変化しますのでご注意ください。
規格値については、下記のJISにて、質別や材料寸法によってA1100の機械的性質が詳細に規定されていますので必要に応じてJISにてご確認ください。
A1100の物理的性質
A1100の物理的性質は下表のとおりです。ここにあるのは代表値ですのでご注意ください。
【A1100の物理的性質)】
物理的性質 | 条件 | 物性値 |
---|---|---|
密度[g/cm3] | 温度:20℃ | 2.71 |
比重 | 温度:20℃ | 2.71 |
溶融温度範囲[℃] | - | 643~657 |
導電率[IACS%] | 質別:O 質別:H18 |
59 57 |
熱伝導度[kW/(m・℃)]25℃ | 質別:O 質別:H18 |
0.22 0.22 |
縦弾性係数(ヤング率)[GPa] | 質別:O 質別:H18 |
69 69 |
横弾性係数[GPa] | 質別:O 質別:H18 |
26 26 |
ポアソン比 | 質別:O 質別:H18 |
0.3 0.3 |
線膨張係数[10-6/℃] | -196~-60℃ | ー |
-60~+20℃ | ー | |
20~100℃ | 23.6 | |
100~200℃ | ー | |
200~300℃ | ー |
A1100の成分
A1100の成分は下記のとおりです。
【A1100の化学成分(%)]
Si | Fe | Cu | Mn | Mg |
---|---|---|---|---|
Si+Fe0.95以下 | 0.05~0.20 | 0.05以下 | - |
Cr | Zn | V,Bi,Pb,Zr, Niなど |
Ti | その他 | Al | |
---|---|---|---|---|---|---|
個々 | 合計 | |||||
- | 0.10以下 | - | - | 0.05以下 | 0.15以下 | 99.00以上 |
A1100の関連規格
A1100は下記のJIS規格で規定されています。
規格番号 | 規格名称 | A1100の規定有無 |
---|---|---|
JIS H4000 | アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条 | ○ |
JIS H4040 | アルミニウム及びアルミニウム合金の棒及び線 | ○ |
JIS H4080 | アルミニウム及びアルミニウム合金継目無管 | ○ |
JIS H4100 | アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材 | ○ |
JIS H4140 | アルミニウム及びアルミニウム合金鍛造品 | - |
A1100の使い方ワンポイント
A1100の特徴は下記のとおりです。
合金 | 質別 | 耐食性 | 耐応力腐食割れ性 | 成形性 | 切削性 | ろう付け性 | 溶接性 | 鍛造性 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ガス | アルゴン | 抵抗 | ||||||||
1100 | O | A | A | A | E | A | A | A | B | A |
1100 | H24 | A | A | A | D | A | A | A | A | A |
1100 | H18 | A | A | C | D | A | A | A | A | A |
優:A→B→C→D:劣
A1100の使い方
A1100は純度99%以上の純アルミなので、強度は低いですが、耐食性や溶接性、アルマイト処理性などに優れています。
より純度の高いA1050、A1070などと比較すると、アルマイト処理後にやや白っぽくなる傾向があります。
アルマイト処理済みの板材が流通しているので、切断してそのまま使うような用途であれば、加工後のアルマイト処理が不要となります。(曲げ加工等はできません)
A1100の強度
A1100の強度は上記の通りですが、冷間加工を行う場合は、加工硬化により強度が上がります。
O材を使った場合でも、断面減少率が75%で、H18(硬質)並の強度となります。加工率を考慮すれば、加工後の製品の強度を推定することができます。
アルミニウム合金の種類・特徴と選び方【機械設計者向け】
A1050A A1050 A1060 A1070 A1080 A1085 A1100A(A1N00) A1100 A1200 A1230A(A1N30)
A2011 A2014A A2014 A2017A A2017 A2018 A2024 A2025 A2030 A2117 A2124 A2218 A2219 A2618 A2N01
A3003 A3004 A3005 A3021 A3102 A3103 A3104 A3105 A3203
A4032
A5005 A5021 A5041(5N02) A5042 A5050 A5052 A5056 A5082 A5083 A5086 A5110A(A5N01) A5154 A5182 A5251 A5254 A5454 A5456 A5754
A6005A A6005C(6N01) A6060 A6061 A6063 A6101 A6151 A6181 A6262 A6463
A7003 A7005 A7010 A7020 A7049A A7050 A7075 A7178 A7204(7N01) A7475 A8011A A8021 A8079