アルミニウム合金の種類・特徴と選び方【機械設計者向け】

アルミニウム合金は、JISH4000(アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条)に52種類(張り合わせ材除く)も種類があり、どれを選ぶか迷うと思います。

ここでは、アルミニウム合金の種類と特徴についての概要と、機械設計を行う上での選び方のポイントや基礎知識についてご説明します。

スポンサーリンク

アルミニウム合金の選び方

まずは、機械部品用途で広く使われているアルミ合金の種類と、選定方法をご説明します。

汎用アルミ合金

 ⇒5000番台(Al-Mg系合金)

いちばん汎用的に使用されているアルミ合金です。溶接もでき、入手に困ることは無いので特に問題なければこれにしましょう。

  • A5052(最も一般的)
  • A5056(棒ならこれ)
  • A5083(Mgを増やして強度アップ)

 

強度重視

 ⇒2000番台(Al-Cu-Mg系)、7000番台(Al-Cu-Zn-Mg系)

強度が欲しいならこれです。しかし、耐食性が悪く応力腐食割れには注意です。溶接やろう付けにも適しません。

  • A2017 (ジェラルミン)
  • A2024 (超ジェラルミン)
  • A7075 (超々ジェラルミン)

 

バランス重視

 ⇒6000番台 (Al-Mg-Si系)

強度も耐食性も必要ならこちらになります。応力腐食割れの心配が少なく、強度も中程度にあるので、自動車部品にも多用されています。鍛造にも向きます。

パイプや形材なら押出加工性が良いこの材料です。アルミサッシや配管材料などに使われています。

 

耐食性、溶接性、成形性、電気伝導性

 ⇒1000番台(純Al系)、3000番台(Al-Mn系)

強度は低くて良いならこちらです。

  • A1100(純度99.0%)
  • A1050(純度99.5%)
  • A1070(純度99.7%)

純アルミに近い特性を維持したまま、もう少し強度が欲しいならこちらです。プレス加工でアルミ缶などにも使われます。

 

高強度&溶接性

 ⇒7000番台(Al-Zn-Mg系)

溶接構造で、なおかつ強度も必要なら、こちらが適しています。鉄道車両などにも使われています。

アルミニウム合金の種類と特徴

アルミニウム合金には、展伸材と鋳造及びダイカスト用があります。ここでは、伸展材について、種類と特徴をまとめます。

【アルミニウム伸展材の種類と特徴】

記号 主要成分 熱処理 特徴と代表的な用途
1000番台 Al 非熱処理型 耐食性に優れ軟質で成形性が良い。溶接も容易ですが、柔らかすぎて切削性は悪い。
2000番台 Al、Cu、Mg 熱処理型 ジュラルミンの名で呼ばれ航空機に使用されます。強度に優れるが耐食性が劣ります。
3000番台 Al、Mn 非熱処理型 純アルミより強度があり、耐食性に優れます。建築材料、容器などをはじめ広い用途があります。
4000番台 Al、Si 非熱処理型 熱膨張が少なく、磨耗特性に優れ鍛造ピストンなどに使用されます。
5000番台 Al、Mg 非熱処理型 強度と耐食性がある汎用アルミ合金です。耐海水性に優れる。光輝性が良く内装材にも使用されます。
6000番台 Al、Mg、Si 熱処理型 強度があり耐食性も良い材料です。押出加工が容易で複雑形状の形材が作れます。鍛造加工にも使われます。
7000番台 Al、(Cu)、Zn、Mg 熱処理型 Cuを含む合金は、強度が最高レベルですが応力腐食割れに弱いです。Cuを含まない合金は高強度溶接材料として使われます。

アルミニウム合金の質別

アルミ合金は、成分だけでなく、冷間加工、溶体化処理、時効硬化、焼きなましなどの鋳造後の処理によって性質が大きく変わります。

これらの処理のことを調質といい、調質方法や条件のことを質別といいます。次のような記号を合金番号の後に付けて区別します。

  • H:加工硬化させたもの
  • T:熱処理を行ったもの(冷間加工、溶体化処理、時効硬化なども組み合わせる)
  • O:焼きなまししたもの

この記号のあとに続く数字が、詳細な条件を示します。非常に多くの質別があるので代表例を示すと下記のようなものがあります。

  • H14:加工硬化だけしたもの。1/2硬質
  • H18:加工硬化だけしたもの。硬質。
  • H24:加工硬化後軟化熱処理したもの。1/2硬質
  • T4:溶体化処理後自然時効させたもの。
  • T6:溶体化処理後人工時効硬化したもの。

アルミ合金で設計するための基礎知識

アルミニウム合金を使って機械部品を設計するときの、全般的な注意事項については以下のとおりです。

アルミは温度で強度が大きく変わる

アルミニウム合金は、強度が70MPaから600MPaまで幅広い強度の材料があるので、耐食性、加工性などの特性により、種類や質別を選択することになります。

しかしこれは常温での話で、鉄鋼に比べて温度による強度変化が大きいので、使用温度での強度評価が必要です。

低温では強度が向上し、面心立方格子のため低温脆性の心配は有りません。

注意が必要なのは高温で、高温では強度が急激に低下し、100℃を超えるとクリープを考慮する必要もでてきます。

耐食性・応力腐食割れ

アルミニウムは活性な金属ですが、大気中の使用では表面に酸化膜が形成されるので、耐食性は良好です。

しかし、塩素イオンを含む液と接触すると孔食、隙間腐食、応力腐食割れ起こしやすいので注意が必要です。

応力腐食割れについては特に注意が必要です。表面に留まる腐食と異なり、応力腐食割れは破損に直結する腐食だからです。設計FMEAでは表面腐食より致命度が高くなり、重大な事故につながる腐食となります。

例えば圧入など引張応力がかかり続けるような部位に高強度合金を使用する場合は、耐食性について十分に評価すべきです。

耐食性を向上させる方法

耐食性を向上させる方法としては、以下のようなものがあります。

陽極酸化皮膜処理

陽極酸化皮膜処理は、アルマイト処理、アノダイズ処理とも呼ばれ、大気中での酸化皮膜よりも強固な酸化皮膜を人工的に作る処理です。

純アルミに近い材料の方が処理が容易で着色性も良くなります。

その他の防食処理

2000番台は耐食性に劣るため航空機などでは、純アルミと張り合わせた材料も用いられます。

表面に犠牲層を設けたクラッド材が自動車部品の熱交換器に、配管部材に電着塗装や樹脂コーティングが用いられています。

アルミニウムを鉄鋼、ステンレス鋼、銅合金などの異種金属と組み合わせて使用する場合は、異種金属接触腐食(電食)についても配慮する必要がります。

まとめ

アルミニウムは比重が小さい(約2.7)、耐食性に優れる、加工性が良い、電気、熱の伝導性が高い、などのメリットが有り、環境、軽量化、省エネといったニーズからアルミ合金の利用は拡大してます。

合金成分の種類によっていろいろ特徴が有りますので、材料選定を正しく行いましょう。

この記事を書いた人
DD
DD

機械設計の仕事をしているエンジニアのDDと申します。
技術士(機械)の資格をもっています。
このブログでは、機械技術から日常の中の科学まで、私が興味を持ったことをできるだけ解りやすく紹介しています!

DDをフォローする
アルミニウム材料金属材料
スポンサーリンク
シェアする