SCM421を使って機械部品の設計をするために必要な情報をまとめました。
化学成分や機械的性質、熱処理や物理的性質など、JIS規格の要点を整理しました。
SCM421とは
SCM421は、浸炭焼入れを行って使用されるクロムモリブデン鋼です。
SCM420とは成分がほとんど同じで、同様に使用できます。
SCM421の関連規格
SCM421は下記のJIS規格で規定されています。
規格番号 | 規格名称 | 概要 |
---|---|---|
JIS G4053 | 機械構造用合金鋼鋼材 | 成分、寸法などを規定 |
JIS G3441 | 機械構造用合金鋼鋼管 | 記号:SCM421TK 鋼管の成分、寸法などを規定 |
SCM421の化学成分
JISで規定された、SCM421の化学成分は下記のとおりです。
SCM421の化学成分[%]
C | Si | Mn | P | S |
---|---|---|---|---|
0.17 ~ 0.23 | 0.15 ~ 0.35 | 0.70 ~ 1.00 | ≦ 0.030 | ≦ 0.030 |
Ni | Cr | Mo | Cu |
---|---|---|---|
≦ 0.25 | 0.90 ~ 1.20 | 0.15 ~ 0.25 | ≦ 0.30 |
炭素当量
SCM421の炭素当量は、以下のとおりです。
0.51~0.72
炭素当量は、溶接の熱影響部の脆さを炭素量に換算した数値で示した値です。
この数値が0.44%以上になると溶接割れを起こしやすくなります。
SCM421の機械的性質
下記の機械的性質は、旧JISに乗っていた、SCM421の参考値です。熱処理条件や質量効果などにより大きく変化しますので、あくまで参考に留めてください。
SCM421の機械的性質
熱処理 | 降伏点 MPa |
引張強さ MPa |
伸び % |
絞り % |
シャルピー衝撃値 J/cm2 |
硬度 HB |
---|---|---|---|---|---|---|
焼入れ焼戻し | – | 980以上 | 14以上 | 35以上 | 59以上 | 285~375 |
SCM421の熱処理(焼入れ・調質)
SCM421のJISに規定された基本的な熱処理条件は下記の通りです。
必ずしもこの通りである必要はなく、必要な強度や硬さを得るために熱処理条件は変更すべきです。
SCM421の熱処理条件
焼ならし | 焼なまし | 焼入れ | 焼戻し |
---|---|---|---|
ー | ー | 1次:850~900℃油冷、2次800~850油冷 | 150~200℃空冷 |
SCM421の物理的性質
下記の値は必ずしもSCM421そのものではなく、成分が近い鋼の値となりますので、参考に留めてください。
SCM421の物理的性質
物理的性質 | 物性値 |
---|---|
縦弾性係数(ヤング率)[GPa] | 210~214 |
横弾性係数[GPa] | 82~83 |
ポアソン比(常温) | 0.28~0.29 |
密度[g/cm3] | 7.81~7.82 |
比重 | 7.81~7.82 |
SCM421の使い方と注意事項
最後にSCM421材を機械部品に使用する際の一般的な注意事項を挙げます。
浸炭で高温焼戻しするケース
浸炭焼入れといえば、200℃程度の低温焼戻しが普通です。
でも、600℃で焼戻ししするケースもあります。
全体の強度はさほど必要なく、ねばりがほしい。多少の変形に耐えるようにしたい。
だけど、部分的にHRC60程度までカチンコチンにしたい。
というような場合、浸炭後、高温焼戻ししてから、更に高周波焼入れする方法があります。
HRC60以上にあげるのは、中炭素鋼では難しいので、この方法もご検討ください。