SS400・SGD400・SGD3・SGD4の違いとは?正しい指定方法も

普通鋼の代表であるSS400は、最も一般的な炭素鋼ですが、棒材はかなりいろいろな呼ばれ方で流通しています。

SS400を指定して注文しても、届くのはSGD400や、SGD 3、SGD 4だったりします。

このことで混乱している人は多く、鋼材メーカーの人に聞いても解釈が別れ、なかなかスッキリしません。

そこで、私なりに整理してみました。

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SS400のみがき棒鋼は無い

JIS規格上は、下表のように分類できます。

まずポイントとなるのは、SS400は熱間圧延材の規格であり、SS400のみがき棒鋼(冷間引抜材)の規格は存在しないことです。

熱間圧延材 冷間引抜材(みがき材)
代表鋼種:
・SS400
規格:
JIS G3101
一般構造用圧延鋼材
代表鋼種:
・(SS400-D)
規格:
なし
代表鋼種:
・SGD B
・SGD 3
規格:
JIS G3108
みがき棒鋼用一般鋼材
代表鋼種:
・SGD400-D
・SGD 3-D
規格:
JIS G3123
みがき棒鋼

よって、SS400を冷間引抜したものをSS400と呼ぶのは規格上は間違いです。

SS400相当のみがき棒は、SGD400-DやSGD3-D(またはSGD4-D)が使用されています。

-D(Drawing:引抜の意味)は省略されることもあります。

SS400とSGD400-D の違い

SS400とSGD400-Dの違いは、下表のとおりです。

SGD400-Dは、冷間引抜により加工硬化しているため、SS400よりも強度が高くなっています。

SS400 SGD400-D
製造方法 熱間圧延 主に冷間引抜
化学成分 %
(P,Sのみ規定)
P:0.050以下
S:0.050以下
P:0.045以下
S:0.045以下
引張強さ N/mm2 400~510 φ20以下または六角:500~850
φ20超え:450~760

SS400は、板材などでは表面を削って仕上げたものも出回ってますが、棒鋼の場合は、通常黒皮です。SGD400-Dは、みがき鋼棒なので、寸法精度が良く、光沢のある鉄鋼の表面です。

SS400とSGD3-D、SGD4-Dの違い

SS400とSGD3-Dの違いは、下表のとおりです。

SGD3-Dに機械的性質の規定はありませんが、通常、SS400の最低値である400N/mm2以上は確保されています。

SS400 SGD3-D
製造方法 熱間圧延 主に冷間引抜
保証 機械的性質保証 化学成分保証
化学成分 % C:規定なし
Mn:規定なし
P:0.050以下
S:0.050以下
C:0.15~0.20
Mn:0.30~0.60
P:0.045以下
S:0.045以下
引張強さ N/mm2 400~510 規定なし

SGD4-Dも流通しており、こちらは、C:0.20~0.25としたもので、その他はSGD3-Dと同じです。

SGD4-Dは、通常、SGD400-Dの機械的性質に近くなっています。

SS400とSGD Bの違い

SGD400-DやSGD3-Dはそれぞれ、熱間圧延材である、SGD B、SGD 3、を母材として、冷間引抜きして作ることがJISで定められています。

SS400とSGD Bは、成分が僅かに違いますが、機械的性質は引張強さ、降伏点、伸びなどは、SS400と同じで、ほとんど同じものと言って良いでしょう。

SS400 SGD B
製造方法 熱間圧延 熱間圧延
化学成分 %
(P,Sのみ規定)
P:0.050以下
S:0.050以下
P:0.045以下
S:0.045以下
引張強さ N/mm2 400~510 400~510
手入れの限度(傷修正の深さ) 規定なし 規定有り

では、なぜSS400をみがき棒鋼の母材にしないで、わざわざSGD Bなんて規格があるのか?

って思いますよね。

SS400のJISは、板、形鋼、平鋼など幅広く、業界も建築、船舶、自動車など、影響が広範囲に及ぶ規格で、これを変更するのは大変です。

SGDBの規格はみがき棒の母材だけの規格で、使用者である磨棒鋼(2次加工)メーカーだけです。中身を見ると、手入れ(修正)の限度深さが規定されていたりします。

鋼材屋さんに聞いても確実では無いのですが、このように、みがき棒を作るのに必要な要件を盛り込むために、SGD Bを作ったのではないかと思います。

しかし、コストや入手性の問題でしょうか、現実には、SGDBはあまり普及せず、SS400を母材にしていることが多いようです。

強度保証のSGD400-Dですから、製鋼メーカーと磨棒鋼メーカーが個別に材料協定を結べば良くて、母材をJISで規定する必要は無いのでは?と思いますが如何でしょうか。

SS400-Dとは?

SS400のみがき棒鋼の規格は存在しない。と言いましたが、これは、JIS G3123(みがき棒鋼)に準拠したものは無いということです。

実際には、SS400を使ったミガキ棒は存在します。(JISに準拠していないので、カタカナで書きました)

これは、SS400を元に、冷間引き抜きして仕上げた、みがき棒鋼相当品となります。

SS400の引張強さは、400~510N/mm2ですが、冷間引き抜きされたSS400-Dは、加工硬化により、強度が高くなります。上限値を超えることもあり、SS400の規格を満足しないので、SS400と呼ぶこともできません。

とはいえ、SGD400-Dと呼ぶとJISには合っていないことになるので、SS400の後ろに、D(drawing)をつけて、SS400-Dと呼んでいる会社もあるようです。

SS400-Dの機械的性質は、JIS規格が無いので、磨棒鋼メーカーの独自規定という形になりますが、通常は、SGD400-Dと同じ規格値が適用されているようです。

機械設計屋の正しい図面規定

SS400系統の棒材の規格は、非常に複雑で、磨棒鋼メーカーや販社によって対応方法が異なるようです。

JIS G系列は、材料屋さんが主メンバーで検討される規格なので、機械設計屋からみると判り難いことも多いですね。

しかし、図面にSS400としか書いていないようでは、材料屋さんに文句は言えません。

鉄ならなんでも良いというレベルの部品ならともかく、黒皮材とミガキ材では、強度はかなり違いますので、正しいJIS記号である、SGD400-Dや、SGD3~4-Dのように記載する方が良いでしょう。

SS400としか書かれていないと、それを受けた加工業者は、黒皮では加工しにくいので、SS400のミガキきをよこせと、材料販社に注文します。

そうすると、そんなJIS材は存在しないので、磨棒鋼メーカーや販社の様々な解釈で、色々な材料が使われてしまうわけです。

重要な部品には、普通鋼では無く、S-C材などを指定するでしょうから、問題は起こらないのかもしれませんが、注意したいですね。

SS400についてはこちらの記事もごらんください。

この記事を書いた人
DD
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機械設計の仕事をしているエンジニアのDDと申します。
技術士(機械)の資格をもっています。
このブログでは、機械技術から日常の中の科学まで、私が興味を持ったことをできるだけ解りやすく紹介しています!

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