ここでは、S43Cを使って機械部品の設計するときに必要な情報として、化学成分や機械的性質、熱処理と物理的性質などJIS規格の内容を整理しました。
また、比重やヤング率などの物理的性質や、実際にS43Cを使う上で、使い方や加工性や溶接性などについての注意事項などについてもまとめました。
S43Cとは
は、JIS G4051(機械構造用炭素鋼鋼材)で規定された鋼材です。
機械構造用炭素鋼は、S-C材と呼ばれ、キルド鋼から合金鋼と同様の管理で製造されるので高品質です。
その中で、S43Cは流通量は少ないです。
炭素量の近いS45Cが一般的には選ばれます。
S43Cの関連規格
S43Cは下記のJIS規格で規定されています。
S43Cの鋼管は、S43CTKとして規定されています。
規格番号 | 規格名称 | 概要 |
---|---|---|
JIS G4051 | 機械構造用炭素鋼鋼材 | S43C素材の成分規定など |
JIS G3478 | 一般機械構造用炭素鋼鋼管 | 鋼管について規定 |
ー | ー | ー |
S43Cの化学成分
JISで規定された、S43Cの化学成分は下記のとおりです。
S43Cの化学成分[%]
C | Si | Mn | P | S |
---|---|---|---|---|
0.40 ~ 0.46 | ≦ 0.035i | 0.60 ~ 0.90 | ≦ 0.030 | ≦ 0.035 |
Ni | Cr | Cu | Ni+Cr |
---|---|---|---|
0.20以下 | 0.20以下 | 0.30以下 | 0.35以下 |
S43Cに相当するISOの鋼種は有りません。
部品設計の歳に、S43Cなど、流通量の少ない鋼種を選ぶと、工場で入手できなくなる場合も有りますので、性能上問題なければ、複数の鋼種を指定しておくのが良いでしょう。
炭素当量
S43Cの炭素当量は、以下のとおりです。
0.51~0.67
炭素当量は、溶接の熱影響部の脆さを炭素量に換算した数値で示した値です。
この数値が0.44%以上になると溶接割れを起こしやすくなります。
S43Cの機械的性質
下記は、旧JISに掲載されていた、直径25mmの標準試験片での機械的性質です。
もっと太い材料の場合は質量効果により強度が低下しますのでご注意ください。
S43Cの機械的性質
熱処理 | 降伏点
MPa |
引張強さ
MPa |
伸び
% |
絞り
% |
シャルピー
衝撃値 J/cm2 |
硬度
HB |
---|---|---|---|---|---|---|
焼きならし | 345以上 | 570以上 | 20以上 | ー | ー | 167 ~ 229 |
焼きなまし | ー | ー | ー | ー | ー | 137 ~ 170 |
焼入れ焼戻し | 490以上 | 690以上 | 17以上 | 45以上 | 78以上 | 201 ~ 269 |
S43Cの熱処理(焼入れ・調質)
S43CのJISに規定された基本的な熱処理条件は下記の通りです。
必ずしもこの通りである必要はなく、必要な強度や硬さを得るために熱処理条件は変更すべきです。
S43Cの熱処理条件
焼ならし | 焼なまし | 焼入れ | 焼戻し |
---|---|---|---|
820 ~ 870℃空冷 | 約 810℃炉冷 | 820 ~ 870℃水冷 | 550 ~650℃急冷 |
熱処理条件はあくまで、基本の方法であって、必ずしもこのとおりでなくてはならない訳ではありません。
S43Cの物理的性質
下記の値は必ずしもS43Cそのものではなく、炭素量が近い炭素鋼の値となりますので、参考に留めてください。
特に熱伝導率や固有抵抗は成分のバラツキによる変動が大きくなりますのでご注意ください。
S43Cの物理的性質
物理的性質 | 物性値 |
---|---|
縦弾性係数(ヤング率)[GPa] | 205 |
横弾性係数[GPa] | 82 |
ポアソン比(常温) | 0.27~0.29 |
密度[g/cm3] | 7.84 |
比重 | 7.84 |
融点[℃] | 1660~1690 |
熱伝導率[W/(m・K)] | 44 |
熱膨張係数[10-6/K] | 10.7 |
固有抵抗[10-8Ω・m] | 19.2~19.7 |
比熱[J/(kg・K)] | 0.489~0.494 |
S43Cの使い方と注意事項
最後にS43C材を機械部品に使用する際の一般的な注意事項を挙げます。
S43Cの用途
S43C材は、ずぶ焼入れや高周波焼入れなどで熱処理することで強度アップが可能です。
生材のままでも強度があるので、一般的な機械部品に広く使用できます。
S45Cを使わずS43Cを使うケース
S43CはS45Cと、成分の範囲が重なっているので、単独で指定するケースは少ないと思います。
例えば図面にS40C~S45Cなどと記載したときに、たまたま在庫のあったS43Cが使われることはあるかと思います。
また、S45Cを使っていて、炭素量が下限付近のときに好結果で、上限付近のときに何らかの問題が起こるような場合、S43Cを指定するといったケースはあるかもしれません。