ここでは、S22Cを使って機械部品の設計するときに必要な情報として、化学成分や機械的性質、熱処理と物理的性質などJIS規格の内容を整理しました。
また、比重やヤング率などの物理的性質や、実際にS22Cを使う上で、使い方や加工性や溶接性などについての注意事項などについてもまとめました。
S22Cとは
S22Cは、JIS G4051(機械構造用炭素鋼鋼材)で規定された鋼材です。
機械構造用炭素鋼は、S-C材と呼ばれ、キルド鋼から合金鋼と同様の管理で製造されるので高品質です。
その中で、S22Cは、S20CとS25Cの中間の低炭素鋼で流通は多くは有りません。
S20CやS25Cなどと同様に熱処理しないで使われますが、浸炭焼入れも可能な上限の炭素量とされています。
S22Cの関連規格
S22Cは下記のJIS規格で規定されています。
S22Cの鋼管は、S22CTKとして規定されています。
規格番号 | 規格名称 | 概要 |
---|---|---|
JIS G4051 | 機械構造用炭素鋼鋼材 | S22C素材の成分規定など |
JIS G3478 | 一般機械構造用炭素鋼鋼管 | 鋼管について規定 |
ー | ー | ー |
S22Cの化学成分
JISで規定された、S22Cの化学成分は下記のとおりです。
S22Cの化学成分[%]
C | Si | Mn | P | S |
---|---|---|---|---|
0.20 ~ 0.25 | ≦ 0.035i | 0.30 ~ 0.60 | ≦ 0.030 | ≦ 0.035 |
Ni | Cr | Cu | Ni+Cr |
---|---|---|---|
0.20以下 | 0.20以下 | 0.30以下 | 0.35以下 |
S22Cに相当するISOの鋼種は有りません。
炭素量の範囲は、S20Cや、S25Cと被っています。
炭素当量
S22Cの炭素当量は、以下のとおりです。
0.26~0.41
炭素当量は、溶接の熱影響部の脆さを炭素量に換算した数値で示した値です。
この数値が0.44%以上になると溶接割れを起こしやすくなります。
S22Cの機械的性質
下記は、旧JISに掲載されていた、直径25mmの標準試験片での機械的性質です。
もっと太い材料の場合は質量効果により強度が低下しますのでご注意ください。
S22Cの機械的性質
熱処理 | 降伏点
MPa |
引張強さ
MPa |
伸び
% |
絞り
% |
シャルピー
衝撃値 J/cm2 |
硬度
HB |
---|---|---|---|---|---|---|
焼きならし | 265以上 | 440以上 | 27以上 | ー | ー | 123 ~ 183 |
焼きなまし | ー | ー | ー | ー | ー | 121 ~ 156 |
焼入れ焼戻し | ー | ー | ー | ー | ー | ー |
S22Cの熱処理(焼入れ・調質)
S22CのJISに規定された基本的な熱処理条件は下記の通りです。
必ずしもこの通りである必要はなく、必要な強度や硬さを得るために熱処理条件は変更すべきです。
S22Cの熱処理条件
焼ならし | 焼なまし | 焼入れ | 焼戻し |
---|---|---|---|
860 ~ 910℃空冷 | 約 850℃炉冷 | ー | ー |
熱処理条件はあくまで、基本の方法であって、必ずしもこのとおりである必要はりません。
S22Cの物理的性質
下記の値は必ずしもS22Cそのものではなく、炭素量が近い炭素鋼の値となりますので、参考に留めてください。
特に熱伝導率や固有抵抗は成分のバラツキによる変動が大きくなりますのでご注意ください。
S22Cの物理的性質
物理的性質 | 物性値 |
---|---|
縦弾性係数(ヤング率)[GPa] | 205~206 |
横弾性係数[GPa] | 79~82 |
ポアソン比(常温) | 0.27~0.29 |
密度[g/cm3] | 7.84~7.86 |
比重 | 7.84~7.86 |
融点[℃] | 1660~1770 |
熱伝導率[W/(m・K)] | 44~60 |
熱膨張係数[10-6/K] | 10.7~11.6 |
固有抵抗[10-8Ω・m] | 13.3~19.7 |
比熱[J/(kg・K)] | 0.474~0.494 |
S22Cの使い方と注意事項
最後にS22C材を機械部品に使用する際の一般的な注意事項を挙げます。
S22Cの用途
S22Cは、S25Cと同様、焼入れせずに使用される材質です。
S20C~S25Cは、加工性が良いので生材のまま使用される機械部品に多用されます。
みがき棒鋼など冷間引き抜きによってある程度加工硬化された材料も多く用いられます。
S22Cの切削加工性
S22Cは、C%が少なくて粘りが有るので、切り屑が連続しやすくなります。
少量生産品ではさほど問題になりませんが、自動機では機械が停止する原因にもなりますので注意が必要です。
S22Cの溶接性
S22CまでのC量であれば、溶接熱影響部の低温割れが問題となる炭素当量0.44%を超えないので、溶接は問題なく行えます。