S38Cとは【強度・硬度・比重・熱処理など】使い方と注意事項

ここでは、S38Cを使って機械部品の設計するときに必要な情報として、化学成分や機械的性質、熱処理と物理的性質などJIS規格の内容を整理しました。

また、比重やヤング率などの物理的性質や、実際にS38Cを使う上で、使い方や加工性や溶接性などについての注意事項などについてもまとめました。

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S38Cとは

S38Cは、JIS G4051(機械構造用炭素鋼鋼材)で規定された鋼材です。
機械構造用炭素鋼は、S-C材と呼ばれ、キルド鋼から合金鋼と同様の管理で製造されるので高品質です。

その中で、S38Cは比較的流通量は比較的少ない鋼種です。

焼入れ性はあまり高くありませんので、質量効果の影響を受けにくい小物部品に適しています。

S38Cの関連規格

S38Cは下記のJIS規格で規定されています。

S38Cの鋼管は、S38CTKとして規定されています。

規格番号 規格名称 概要
JIS G4051 機械構造用炭素鋼鋼材 S38C素材の成分規定など
JIS G3478 一般機械構造用炭素鋼鋼管 鋼管について規定

S38Cの化学成分

JISで規定された、S38Cの化学成分は下記のとおりです。

S38Cの化学成分[%]

C Si Mn P S
0.35 ~ 0.41 ≦ 0.035i 0.60 ~ 0.90 ≦ 0.030 ≦ 0.035
Ni Cr Cu Ni+Cr
0.20以下 0.20以下 0.30以下 0.35以下

S38Cに相当するISOの鋼種は有りません。

炭素当量

S38Cの炭素当量は、以下のとおりです。

0.46~0.62

炭素当量は、溶接の熱影響部の脆さを炭素量に換算した数値で示した値です。

この数値が0.44%以上になると溶接割れを起こしやすくなります。

S38Cの機械的性質

下記は、旧JISに掲載されていた、直径25mmの標準試験片での機械的性質です。
もっと太い材料の場合は質量効果により強度が低下しますのでご注意ください。

S38Cの機械的性質

熱処理 降伏点

MPa

引張強さ

MPa

伸び

%

絞り

%

シャルピー

衝撃値

J/cm2

硬度

HB

焼きならし 325以上 540以上 22以上 156 ~ 217
焼きなまし 131 ~ 163
焼入れ焼戻し 440以上 610以上 20以上 50以上 88以上 179 ~ 255

S38Cの熱処理(焼入れ・調質)

S38CのJISに規定された基本的な熱処理条件は下記の通りです。

必ずしもこの通りである必要はなく、必要な強度や硬さを得るために熱処理条件は変更すべきです。

S38Cの熱処理条件

焼ならし 焼なまし 焼入れ 焼戻し
830 ~ 880℃空冷 約 820℃炉冷 830 ~ 880℃水冷 550 ~650℃急冷

熱処理条件はあくまで、基本の方法であって、必ずしもこのとおりでなくてはならない訳ではありません。

S38Cの物理的性質

下記の値は必ずしもS38Cそのものではなく、炭素量が近い炭素鋼の値となりますので、参考に留めてください。

特に熱伝導率や固有抵抗は成分のバラツキによる変動が大きくなりますのでご注意ください。

S38Cの物理的性質

物理的性質 物性値
縦弾性係数(ヤング率)[GPa] 205~206
横弾性係数[GPa] 79~82
ポアソン比(常温) 0.27~0.29
密度[g/cm3] 7.84~7.86
比重 7.84~7.86
融点[℃] 1660~1770
熱伝導率[W/(m・K)] 44~60
熱膨張係数[10-6/K] 10.7~11.6
固有抵抗[10-8Ω・m] 13.3~19.7
比熱[J/(kg・K)] 0.474~0.494

S38Cの使い方と注意事項

最後にS38C材を機械部品に使用する際の一般的な注意事項を挙げます。

S38Cの用途

S38Cはある程度強度の必要な部品に生材のまま使うこともできます。

もちろん、焼入れ焼戻しすることで強度が高く粘りのある機械的性質が得られます。

S45Cを使わずS38Cを指定するケース

S38Cといった5刻みでない鋼種を単独で指定するケースは少ないと思います。

S30C~S45Cの中で、焼入れ深さを調節したい場合に、S38Cを指定するケースがあるかと思います。

【関連材料】
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機械設計の仕事をしているエンジニアのDDと申します。
技術士(機械)の資格をもっています。
このブログでは、機械技術から日常の中の科学まで、私が興味を持ったことをできるだけ解りやすく紹介しています!

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