S17Cとは【強度・硬度・比重・熱処理など】使い方と注意事項

ここでは、S17Cを使って機械部品の設計するときに必要な情報として、化学成分や機械的性質、熱処理と物理的性質などJIS規格の内容を整理しました。

また、比重やヤング率などの物理的性質や、実際にS17Cを使う上で、使い方や加工性や溶接性などについての注意事項などについてもまとめました。

スポンサーリンク

S17Cとは

S17Cは、JIS G4051(機械構造用炭素鋼鋼材)で規定された鋼材です。
機械構造用炭素鋼は、S-C材と呼ばれ、キルド鋼から合金鋼と同様の管理で製造されるので高品質です。

その中で、S17Cは浸炭焼入れで用いられる低炭素鋼です。
炭素量がS15CやS20Cと近く、熱処理した後の性質も近いので、S17Cだけを限定して指定することは少ないと思います。

S17Cの関連規格

S17Cは下記のJIS規格で規定されています。

S17Cの鋼管は、S17CTKとして規定されています。

規格番号 規格名称 概要
JIS G4051 機械構造用炭素鋼鋼材 S17C素材の成分規定など
JIS G3478 一般機械構造用炭素鋼鋼管 鋼管について規定

S17Cの化学成分

JISで規定された、S17Cの化学成分は下記のとおりです。

S17Cの化学成分[%]

C Si Mn P S
0.15 ~ 0.20 ≦ 0.035i 0.30 ~ 0.60 ≦ 0.030 ≦ 0.035
Ni Cr Cu Ni+Cr
0.20以下 0.20以下 0.30以下 0.35以下

S17Cに相当するISOの鋼種は有りません。
炭素量の範囲は、S15Cや、S20Cと被っています。

炭素当量

S17Cの炭素当量は、以下のとおりです。

0.21~0.36

炭素当量は、溶接の熱影響部の脆さを炭素量に換算した数値で示した値です。

この数値が0.44%以上になると溶接割れを起こしやすくなります。

S17Cの機械的性質

炭素量が少ないため伸びが大きく、鍛造、加締めなどの加工に適しています。

下記は、旧JISに掲載されていた、直径25mmの標準試験片での機械的性質です。
もっと太い材料の場合は質量効果により強度が低下しますのでご注意ください。

S17Cの機械的性質

熱処理 降伏点

MPa

引張強さ

MPa

伸び

%

絞り

%

シャルピー

衝撃値

J/cm2

硬度

HB

焼きならし 245以上 400以上 28以上 116 ~ 174
焼きなまし 114 ~ 153
焼入れ焼戻し

S17Cの熱処理(焼入れ・調質)

S17CのJISに規定された基本的な熱処理条件は下記の通りです。

必ずしもこの通りである必要はなく、必要な強度や硬さを得るために熱処理条件は変更すべきです。

S17Cの熱処理条件

焼ならし 焼なまし 焼入れ 焼戻し
870 ~ 920℃空冷 約 860℃炉冷

熱処理条件はあくまで、基本の方法であって、必ずしもこのとおりである必要はりません。

浸炭焼入れは、930℃程度で3~4時間浸炭後、そのまま800℃まで下げて、焼入れを行います。

その後、200℃程度で低温焼戻しして使用します。

S17Cの物理的性質

下記の値は必ずしもS17Cそのものではなく、炭素量が近い炭素鋼の値となりますので、参考に留めてください。

特に熱伝導率や固有抵抗は成分のバラツキによる変動が大きくなりますのでご注意ください。

S17Cの物理的性質

物理的性質 物性値
縦弾性係数(ヤング率)[GPa] 205~206
横弾性係数[GPa] 79~82
ポアソン比(常温) 0.27~0.29
密度[g/cm3] 7.84~7.86
比重 7.84~7.86
融点[℃] 1660~1770
熱伝導率[W/(m・K)] 44~60
熱膨張係数[10-6/K] 10.7~11.6
固有抵抗[10-8Ω・m] 13.3~19.7
比熱[J/(kg・K)] 0.474~0.494

S17Cの使い方と注意事項

最後にS17C材を機械部品に使用する際の一般的な注意事項を挙げます。

S17Cの用途

S17Cは、伸びが大きいので、冷間加工に適します。溶接性も優れています。

S17Cの切削加工性

S17Cは、C%が少なくて粘りが有るので、刃物に溶着しやすく、構成刃先で表面が荒れることがあります。
切削速度を上げると構成刃先ができてもすぐに取れるようになるので、表面性状を良くすることが可能です。

S17Cの溶接性

S17Cは、SS400などよりも、溶接性は良好です。

成分規定があるので問題は起こりにくいです。

S17Cの浸炭焼入れ

S17Cは、はだ焼入れ(浸炭焼入れ)することで、強度を要求される部品に使用可能です。
はだ焼入れは中心部は柔らかいままですが、表面の強度は非常に高くなります。機械部品は曲げやねじりなど、表面の応力が高くなる場合も多く、S17Cにはだ焼入れすることで、優れた機械特性の部品が得られます。

【関連材料】
S10C S12C S15C S17C S20C S22C S25C S28C S30C S33C S35C S38C S40C S43C S45C S48C S50C S53C S55C S58C S09CK S15CK S20CK
この記事を書いた人
DD
DD

機械設計の仕事をしているエンジニアのDDと申します。
技術士(機械)の資格をもっています。
このブログでは、機械技術から日常の中の科学まで、私が興味を持ったことをできるだけ解りやすく紹介しています!

DDをフォローする
金属材料
スポンサーリンク
シェアする