ここでは、S33Cを使って機械部品の設計するときに必要な情報として、化学成分や機械的性質、熱処理と物理的性質などJIS規格の内容を整理しました。
また、比重やヤング率などの物理的性質や、実際にS33Cを使う上で、使い方や加工性や溶接性などについての注意事項などについてもまとめました。
S33Cとは
S33Cは、JIS G4051(機械構造用炭素鋼鋼材)で規定された鋼材です。
機械構造用炭素鋼は、S-C材と呼ばれ、キルド鋼から合金鋼と同様の管理で製造されるので高品質です。
その中で、S33Cは、加工性が良く、熱処理した小物部品に使用されています。市場の流通量は少ないです。
溶接も可能ですが、この位の炭素量から、熱影響部の硬度が高くなる可能性も高くなってきますので注意が必要です。
S33Cの関連規格
S33Cは下記のJIS規格で規定されています。
S33Cの鋼管は、S33CTKとして規定されています。
規格番号 | 規格名称 | 概要 |
---|---|---|
JIS G4051 | 機械構造用炭素鋼鋼材 | S33C素材の成分規定など |
JIS G3478 | 一般機械構造用炭素鋼鋼管 | 鋼管について規定 |
ー | ー | ー |
S33Cの化学成分
JISで規定された、S33Cの化学成分は下記のとおりです。
S33Cの化学成分[%]
C | Si | Mn | P | S |
---|---|---|---|---|
0.30 ~ 0.36 | ≦ 0.035i | 0.60 ~ 0.90 | ≦ 0.030 | ≦ 0.035 |
Ni | Cr | Cu | Ni+Cr |
---|---|---|---|
0.20以下 | 0.20以下 | 0.30以下 | 0.35以下 |
S33Cに相当するISOの鋼種は有りません。
炭素当量
S33Cの炭素当量は、以下のとおりです。
0.41~0.57
炭素当量は、溶接の熱影響部の脆さを炭素量に換算した数値で示した値です。
この数値が0.44%以上になると溶接割れを起こしやすくなります。
S33Cの機械的性質
下記は、旧JISに掲載されていた、直径25mmの標準試験片での機械的性質です。
もっと太い材料の場合は質量効果により強度が低下しますのでご注意ください。
S33Cの機械的性質
熱処理 | 降伏点
MPa |
引張強さ
MPa |
伸び
% |
絞り
% |
シャルピー
衝撃値 J/cm2 |
硬度
HB |
---|---|---|---|---|---|---|
焼きならし | 305以上 | 510以上 | 23以上 | ー | ー | 149 ~ 207 |
焼きなまし | ー | ー | ー | ー | ー | 126 ~ 163 |
焼入れ焼戻し | 390以上 | 570以上 | 22以上 | 55以上 | 98以上 | 167 ~ 235 |
S33Cの熱処理(焼入れ・調質)
S33CのJISに規定された基本的な熱処理条件は下記の通りです。
必ずしもこの通りである必要はなく、必要な強度や硬さを得るために熱処理条件は変更すべきです。
S33Cの熱処理条件
焼ならし | 焼なまし | 焼入れ | 焼戻し |
---|---|---|---|
840 ~ 890℃空冷 | 約 830℃炉冷 | 840 ~ 890℃水冷 | 550 ~650℃急冷 |
熱処理条件はあくまで、基本の方法であって、必ずしもこのとおりでなくてはならない訳ではありません。
S33Cの物理的性質
下記の値は必ずしもS33Cそのものではなく、炭素量が近い炭素鋼の値となりますので、参考に留めてください。
特に熱伝導率や固有抵抗は成分のバラツキによる変動が大きくなりますのでご注意ください。
S33Cの物理的性質
物理的性質 | 物性値 |
---|---|
縦弾性係数(ヤング率)[GPa] | 205~206 |
横弾性係数[GPa] | 79~82 |
ポアソン比(常温) | 0.27~0.29 |
密度[g/cm3] | 7.84~7.86 |
比重 | 7.84~7.86 |
融点[℃] | 1660~1770 |
熱伝導率[W/(m・K)] | 44~60 |
熱膨張係数[10-6/K] | 10.7~11.6 |
固有抵抗[10-8Ω・m] | 13.3~19.7 |
比熱[J/(kg・K)] | 0.474~0.494 |
S33Cの使い方と注意事項
最後にS33C材を機械部品に使用する際の一般的な注意事項を挙げます。
S33Cの用途
S33Cは切削性加工性が良く、熱処理で強度アップも可能なので、強度の必要な小物部品に向いています。
S33Cの切削加工性
S33Cは柔らかすぎず、硬すぎないので、切削性は良好です。
S30C以上の切削性は良好ですが、炭素量が増えるに連れ、ツールの寿命が低下する傾向となります。