クロムモリブデン鋼SCM418を使用して機械部品の設計をするための資料をまとめました。
強度や硬さなどの機械的性質や、比重やヤング率などの物理的性質についても整理しましたので御覧ください。
SCM418とは
SCM418は、合金元素により焼入れ性が良いので、大きな部品でも焼入れを深く入れることができます。
SCM415やSCM420と同様に浸炭焼入れして使用されます。
SCM418の関連規格
SCM418は下記のJIS規格で規定されています。
焼入性保証の材質である、SCM418Hが主流となっており、棒、管についてそれぞれ規格があります。
規格番号 | 規格名称 | 概要 |
---|---|---|
JIS G4053 | 機械構造用合金鋼鋼材 | 成分、寸法などを規定 |
JIS G4052 | 焼入性を保証した構造用鋼鋼材(H鋼) | 記号:SCM418H 焼入れ性、オーステナイト結晶粒度などを規定 |
JIS G3441 | 機械構造用合金鋼鋼管 | 記号:SCM418TK 鋼管の成分、寸法などを規定 |
JIS G3479 | 焼入性を保証した機械構造用鋼管 | 記号:SCM418HTK 鋼管の焼入れ性、オーステナイト結晶粒度などを規定 |
JISG3509-1 | 冷間圧造用合金鋼-第1部 線材 | 記号:SCM418RCH 線材の成分などについて規定 |
JISG3509-2 | 冷間圧造用合金鋼-第2部:線 | 記号:SCM418WCH 線の機械的性質などを規定 |
SCM418の化学成分
JISで規定された、SCM418の化学成分は下記のとおりです。
- SCM418の化学成分[%]
C | Si | Mn | P | S |
---|---|---|---|---|
0.16 ~ 0.21 | 0.15 ~ 0.35 | 0.60 ~ 0.90 | ≦ 0.030 | ≦ 0.030 |
Ni | Cr | Mo | Cu |
---|---|---|---|
≦ 0.25 | 0.90 ~ 1.20 | 0.15 ~ 0.25 | ≦ 0.30 |
- SCM418Hの化学成分[%]
C | Si | Mn | P | S |
---|---|---|---|---|
0.15 ~ 0.21 | 0.15 ~ 0.35 | 0.55 ~ 0.95 | ≦ 0.030 | ≦ 0.030 |
Ni | Cr | Mo | Cu |
---|---|---|---|
≦ 0.25 | 0.85 ~ 1.25 | 0.15 ~ 0.25 | ≦ 0.30 |
炭素当量
SCM418の炭素当量は、以下のとおりです。
- SCM418:0.48~0.68
- SCM418H:0.46~0.70
炭素当量は、溶接の熱影響部の脆さを炭素量に換算した数値で示した値です。
この数値が0.44%以上になると溶接割れを起こしやすくなります。
SCM418の機械的性質
下記の機械的性質は、旧JISに乗っていた、SCM418の参考値です。熱処理条件や質量効果などにより大きく変化しますので、あくまで参考に留めてください。
SCM418の機械的性質
熱処理 | 降伏点 MPa |
引張強さ MPa |
伸び % |
絞り % |
シャルピー 衝撃値 J/cm2 |
硬度 HB |
---|---|---|---|---|---|---|
焼入れ焼戻し | – | 880以上 | 15以上 | 40以上 | 69以上 | 248~331 |
SCM418の熱処理(焼入れ・調質)
SCM418のJISに規定された基本的な熱処理条件は下記の通りです。
必ずしもこの通りである必要はなく、必要な強度や硬さを得るために熱処理条件は変更すべきです。
SCM418の熱処理条件
焼ならし | 焼なまし | 焼入れ | 焼戻し |
---|---|---|---|
ー | ー | 1次:850~900℃油冷、2次800~850油冷 | 150~200℃空冷 |
SCM418の物理的性質
下記の値は必ずしもSCM418そのものではなく、成分が近い鋼の値となりますので、参考に留めてください。
SCM418の物理的性質
物理的性質 | 物性値 |
---|---|
縦弾性係数(ヤング率)[GPa] | 210~214 |
横弾性係数[GPa] | 82~83 |
ポアソン比(常温) | 0.28~0.29 |
密度[g/cm3] | 7.81~7.82 |
比重 | 7.81~7.82 |
SCM418の使い方と注意事項
最後にSCM418材を機械部品に使用する際の一般的な注意事項を挙げます。
クロモリかSC材どちらを選ぶ?
浸炭焼入れで焼戻し温度が同じなら、材料の炭素量によらず、また、クロモリでもSC材でも表面硬さはみんな同じです。
クロモリの方が焼入れ性が良いので、同じ炭素量でも中心部の硬さが高くなります。
また、クロモリの方が、硬さの変化をなだらかにすることができるので、表面の割れ、欠けにも強い場合が多いです。