SCM415、SCM415Hを使って機械部品の設計をするために必要な情報をまとめました。
化学成分や機械的性質、熱処理や物理的性質など、JIS規格の要点を整理しました。
SCM415とは
SCM415はクロムモリブデン鋼の中でも最も炭素量の少ない材質です。
浸炭焼入れして使用する材料として多用されています。表面の炭素量を増やすことで、表面が硬くて、中がねばい特性を得ることができます。
通常、焼入れ性保証のH鋼(SCM415H)が使用されます。
SCM415の関連規格
SCM415は下記のJIS規格で規定されています。
焼入性保証の材質である、SCM415Hが主流となっており、棒、管についてそれぞれ規格があります。
JIS G3479焼入性を保証した機械構造用鋼管記号:SCM415HTK
鋼管の焼入れ性、オーステナイト結晶粒度などを規定
規格番号 | 規格名称 | 概要 |
---|---|---|
JIS G4053 | 機械構造用合金鋼鋼材 | 成分、寸法などを規定 |
JIS G4052 | 焼入性を保証した構造用鋼鋼材(H鋼) | 記号:SCM415H 焼入れ性、オーステナイト結晶粒度などを規定 |
JIS G3441 | 機械構造用合金鋼鋼管 | 記号:SCM415TK 鋼管の成分、寸法などを規定 |
JIS G3479 | 焼入性を保証した機械構造用鋼管 | 記号:SCM415HTK 鋼管の焼入れ性、オーステナイト結晶粒度などを規定 |
JISG3509-1 | 冷間圧造用合金鋼-第1部 線材 | 記号:SCM415RCH 線材の成分などについて規定 |
JISG3509-2 | 冷間圧造用合金鋼-第2部:線 | 記号:SCM415WCH 線の機械的性質などを規定 |
SCM415、SCM415Hの化学成分
JISで規定された、SCM415とSCM415Hの化学成分は下記のとおりです。
H鋼の方が、成分の範囲は広くなっており、その代わり機械部品の強度を得るために肝心な、焼入れ性は保証されます。
- SCM415の化学成分[%]
C | Si | Mn | P | S |
---|---|---|---|---|
0.13 ~ 0.18 | 0.15~0.35 | 0.60 ~ 0.90 | ≦ 0.030 | ≦ 0.030 |
Ni | Cr | Mo | Cu |
---|---|---|---|
≦ 0.25 | 0.90 ~ 1.20 | 0.15~0.25 | ≦ 0.30 |
- SCM415Hの化学成分[%]
C | Si | Mn | P | S |
---|---|---|---|---|
0.12 ~ 0.18 | 0.15~0.35 | 0.55 ~ 0.95 | ≦ 0.030 | ≦ 0.030 |
Ni | Cr | Mo | Cu |
---|---|---|---|
≦ 0.25 | 0.85 ~ 1.25 | 0.15~0.30 | ≦ 0.30 |
炭素当量
SCM415の炭素当量は、以下のとおりです。
- SCM415:0.45~0.65
- SCM415H:0.43~0.68
炭素当量は、溶接の熱影響部の脆さを炭素量に換算した数値で示した値です。
この数値が0.44%以上になると溶接割れを起こしやすくなります。
SCM415の機械的性質
下記の機械的性質は、旧JISに乗っていた、SCM415の参考値です。熱処理条件や質量効果などにより大きく変化しますので、あくまで参考に留めてください。
SCM415の機械的性質
熱処理 | 降伏点 MPa |
引張強さ MPa |
伸び % |
絞り % |
シャルピー 衝撃値 J/cm2 |
硬度 HB |
---|---|---|---|---|---|---|
焼入れ焼戻し | – | 830以上 | 16以上 | 40以上 | 69以上 | 235~321 |
SCM415の熱処理(焼入れ・調質)
SCM415のJISに規定された基本的な熱処理条件は下記の通りです。
必ずしもこの通りである必要はなく、必要な強度や硬さを得るために熱処理条件は変更すべきです。
SCM415の熱処理条件
焼ならし | 焼なまし | 焼入れ | 焼戻し |
---|---|---|---|
ー | ー | 1次:850~900℃油冷、2次800~850油冷 | 150~200℃空冷 |
SCM415の物理的性質
下記の値は必ずしもSCM415そのものではなく、成分が近い鋼の値となりますので、参考に留めてください。
SCM415の物理的性質
物理的性質 | 物性値 |
---|---|
縦弾性係数(ヤング率)[GPa] | 210~214 |
横弾性係数[GPa] | 82~83 |
ポアソン比(常温) | 0.28~0.29 |
密度[g/cm3] | 7.81~7.82 |
比重 | 7.81~7.82 |
SCM415の使い方と注意事項
最後にSCM415材を機械部品に使用する際の一般的な注意事項を挙げます。
肌焼入れ材の使い分け
クロムモリブデン鋼の肌焼入れ用材は、SCM415、SCM418、SCM420、SCM421、SCM425、SCM822と6種類もあります。
その使い分けは、中心部の硬さがどのくらい欲しいのかによって決まります。
成分だけではなく、質量効果によって硬さが変わりますので、同じ硬さを得るには、大きいものほど炭素量の多い鋼種が必要になります。