SCM425を使って機械部品の設計をするために必要な情報をまとめました。
化学成分や機械的性質、熱処理や物理的性質など、JIS規格の要点を整理しました。
SCM425とは
SCM425はJISG4053の2003年版で追加された材料です。
SCM420と比較して、浸炭焼入れで、内部の硬さも高くなるので、ピニオンギヤなど過酷な条件の部品に適します。
SCM425の関連規格
SCM425は下記のJIS規格で規定されています。
焼入性保証の材質である、SCM425Hが主流となっており、棒、管についてそれぞれ規格があります。
規格番号 | 規格名称 | 概要 |
---|---|---|
JIS G4053 | 機械構造用合金鋼鋼材 | 成分、寸法などを規定 |
JIS G4052 | 記号:SCM425H 焼入性を保証した構造用鋼鋼材(H鋼) |
焼入れ性、オーステナイト結晶粒度などを規定 |
JIS G3442 | 機械構造用合金鋼鋼管 | 記号:SCM425TK 鋼管の成分、寸法などを規定 |
JIS G3479 | 焼入性を保証した機械構造用鋼管 | 記号:SCM425HTK 鋼管の焼入れ性、オーステナイト結晶粒度などを規定 |
JISG3509-1 | 冷間圧造用合金鋼-第1部 線材 | 記号:SCM425RCH 線材の成分などについて規定 |
JISG3509-2 | 冷間圧造用合金鋼-第2部:線 | 記号:SCM425WCH 線の機械的性質などを規定 |
SCM425の化学成分
JISで規定された、SCM425の化学成分は下記のとおりです。
- SCM425の化学成分[%]
C | Si | Mn | P | S |
---|---|---|---|---|
0.23 ~ 0.28 | 0.15 ~ 0.35 | 0.60 ~ 0.90 | ≦ 0.030 | ≦ 0.030 |
Ni | Cr | Mo | Cu |
---|---|---|---|
≦ 0.25 | 0.90 ~ 1.20 | 0.15 ~ 0.30 | ≦ 0.30 |
- SCM425Hの化学成分[%]
C | Si | Mn | P | S |
---|---|---|---|---|
0.23 ~ 0.28 | 0.15 ~ 0.35 | 0.55 ~ 0.95 | ≦ 0.030 | ≦ 0.030 |
Ni | Cr | Mo | Cu |
---|---|---|---|
≦ 0.25 | 0.85 ~ 1.25 | 0.15 ~ 0.30 | ≦ 0.30 |
炭素当量
SCM425の炭素当量は、以下のとおりです。
SCM425:0.55~0.77
SCM425H:0.54~0.78
炭素当量は、溶接の熱影響部の脆さを炭素量に換算した数値で示した値です。
この数値が0.44%以上になると溶接割れを起こしやすくなります。
SCM425では溶接によって焼入れが入り熱影響部が硬化しますので、溶接には向きません。
SCM425の機械的性質
SCM425については、新しく追加された鋼種なので、旧JISの機械的性質の参考値は有りません。
SCM425の物理的性質
下記の値は必ずしもSCM425そのものではなく、炭素量が近い炭素鋼の値となりますので、参考に留めてください。
特に熱伝導率や固有抵抗は成分のバラツキによる変動が大きくなりますのでご注意ください。
SCM425の物理的性質
物理的性質 | 物性値 |
---|---|
縦弾性係数(ヤング率)[GPa] | 210~214 |
横弾性係数[GPa] | 82~83 |
ポアソン比(常温) | 0.28~0.29 |
密度[g/cm3] | 7.81~7.82 |
比重 | 7.81~7.82 |
SCM425の使い方と注意事項
最後にSCM425材を機械部品に使用する際の一般的な注意事項を挙げます。
高負荷部品にSCM425
炭素量0.25%の材料は浸炭にはあまり使われていなかったと思います。
私がクロモリ浸炭を適用する場合は、SCM415HかSCM420Hを指定していました。
しかし、SCM425を浸炭すると、中心部の硬さも上がるので、とっても強いそうです。
歯車など面圧が強く、曲げが作用する部品には、たしかに良さそうに思います。
しかし、母材の炭素量があがるほど、浸炭焼入れによる表面の圧縮残留応力が減少する傾向になると考えられるので、疲労破壊には注意してください。
ぜひ使ってみてください。