SCM430とは【密度・硬度・ヤング率など】使い方と注意事項

クロムモリブデン鋼SCM430を使用して機械部品の設計をするための資料をまとめました。

強度や硬さなどの機械的性質や、密度・比重やヤング率などの物理的性質についても整理しましたので御覧ください。

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SCM430とは

SCM430は調質によって高靭性が得られる材料です。

炭素鋼のSC材と比べて、合金元素であるクロムとモリブデンによって焼入れ性が良くなっています。

このため、大型の部品に使用しても中心部まで焼きが入るので、焼戻し後の硬さが同じでも、降伏点や靭性を高くすることができます。

SCM430の関連規格

SCM430は下記のJIS規格で規定されています。

SCM430には、焼入れ性保証のH鋼の規格はありません。

規格番号 規格名称 概要
JIS G4053 機械構造用合金鋼鋼材 成分、寸法などを規定
JIS G3441 機械構造用合金鋼鋼管 記号:SCM430TK
鋼管の成分、寸法などを規定
JISG3509-1 冷間圧造用合金鋼-第1部 線材 記号:SCM430RCH
線材の成分などについて規定
JISG3509-2 冷間圧造用合金鋼-第2部:線 記号:SCM430WCH
線の機械的性質などを規定

SCM430の化学成分

JISで規定された、SCM430の化学成分は下記のとおりです。

  • SCM430の化学成分[%]
C Si Mn P S
0.28 ~ 0.33 0.15 ~ 0.35 0.60 ~ 0.90 ≦ 0.030 ≦ 0.030
Ni Cr Mo Cu
≦ 0.25 0.90 ~ 1.20 0.15 ~ 0.30 ≦ 0.30

炭素当量

SCM430の炭素当量は、以下のとおりです。

0.60~0.82

炭素当量は、溶接の熱影響部の脆さを炭素量に換算した数値で示した値です。

この数値が0.44%以上になると溶接割れを起こしやすくなります。

SCM430では溶接によって焼入れが入り熱影響部が硬化しますので、一般的な溶接には向きません。

SCM430の機械的性質

下記の機械的性質は、旧JISに乗っていた、SCM430の参考値です。熱処理条件や質量効果などにより大きく変化しますので、あくまで参考に留めてください。

SCM430の機械的性質

熱処理 降伏点

MPa

引張強さ

MPa

伸び

%

絞り

%

シャルピー

衝撃値

J/cm2

硬度

HB

焼入れ焼戻し 685以上 830以上 18以上 55以上 108以上 241~302

SCM430の熱処理(焼入れ・調質)

SCM430のJISに規定された基本的な熱処理条件は下記の通りです。

必ずしもこの通りである必要はなく、必要な強度や硬さを得るために熱処理条件は変更すべきです。

SCM430の熱処理条件

焼ならし 焼なまし 焼入れ 焼戻し
830~880℃油冷 530~630℃空冷

SCM430の物理的性質

下記の値は必ずしもSCM430そのものではなく、炭素量が近い炭素鋼の値となりますので、参考に留めてください。

特に熱伝導率や固有抵抗は成分のバラツキによる変動が大きくなりますのでご注意ください。

SCM430の物理的性質

物理的性質 物性値
縦弾性係数(ヤング率)[GPa] 210~214
横弾性係数[GPa] 82~83
ポアソン比(常温) 0.28~0.29
密度[g/cm3] 7.81~7.82
比重 7.81~7.82

SCM430の使い方と注意事項

最後にSCM430材を機械部品に使用する際の一般的な注意事項を挙げます。

SCM435やSCM440との比較

クロモリ材では、SCM435やSCM440の方が流通性が良いので、特にSCM430を使う必要性がなければこれらの鋼種を選んだほうが良いかもしれません。

硬さを低くしたい場合は、焼戻し温度を高くすることで調整可能です。

SCM430の方が炭素が少ない分、伸びが良くなるので、SCM435で問題になる場合は適用を検討しても良いかと思います。

【関連材料】
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機械設計の仕事をしているエンジニアのDDと申します。
技術士(機械)の資格をもっています。
このブログでは、機械技術から日常の中の科学まで、私が興味を持ったことをできるだけ解りやすく紹介しています!

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