C3604の用途やRoHS対応は?強度や比重と耐食性もまとめ

C3604とは、快削黄銅とも言われる黄銅(真鍮)材です。ここでは機械設計に必要な特徴や詳細な性質についてまとめました。

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C3604とは?

まずは、C3604の特徴と機械部品に適用する場合の注意事項などについてご説明します。

C3604の用途

C3604は鉛を1.8~3.7wt%含有し切削性に優れるので、小物部品全般に使用されます。特に水を使うバルブ、継手などに多用されています。

塑性加工の限界は低いので、鍛造や加締め加工などには向きません。

C3604の強度

C3604は銅-亜鉛系合金で、適度な強度を持っています。

機械的性質は、下記 参照ください。

C3604の耐熱性

JIS B8265 「圧力容器の構造-一般事項」によると、最低使用温度は、-196℃となっています。許容引張応力は+200℃までの値が記載されていますので、使用温度範囲は、-196℃~200℃と考えてよいでしょう。強度低下を考えると+150℃と考えたほうが良いかもしれません。

各温度での許容応力については、下記 参照願います。

C3604の耐食性

C3604のような銅-亜鉛系の合金は、引張応力下で腐食環境に晒されると、応力腐食割れ(時期割れ)のリスクがあります。

フレア継手のように周方向に広がる力がかかるナットではよく問題になります。

ろう付けなどで急冷すると残留応力が残りやすいので、問題となる場合は200~240℃程度で応力除去するとよいとされます。

他の材料との使い分け

C3604で問題がある場合は下記の材質が候補となります。

カシメ性を良くしたい

C3602、C3771

C3604と並んでよく使用される快削黄銅棒として、C3602があります。

C3602は切削性はC3604より劣りますが、加締めや転造加工などの軽度な塑性加工が可能です。

更に塑性加工性を重視するのであれば、鍛造用のC3771などを用います。

カドミレス(RoHS対応)材にしたい

C3604CdL

C3604のJISにはカドミウム量の規定が無いので、不純物としてCd量が多くなる可能性があり、RoHS指令の0.1%を保証できません。

そこで、特にカドミウム量の管理を行った、カドミレス材(Cd:75ppm以下保証等)が存在します。(メーカーによって呼び方が異なりますが、C3604CdLなどと呼称)

鉛レス化したい

鉛レス材(C6801、C6802など各社独自材も有り) 

RoHS規格では、鉛は0.1%以下が最大許容濃度となってますが、黄銅材の鉛については、適用除外条項6(c)にて、鉛含有量4%以下とすることが認められています。これには期限がありますが、2026年7月21までに延長されました。

C3604の鉛含有量は、1.80~3.70%なので、期限が再度延長されなければ期限以降はRoHS対応品には使用できなくなってしまいます。

鉛の代わりに、ビスマスやシリコンを添加した鉛レス材(鉛0.1%以下)もJIS H3250に規定されてます。

鉛レス材の切削性についてはC3604に近いとも言われてますが、切り屑処理の問題(混入できない)などもあるので、一部だけ切り替えるのが難しいという面もあります。

どこかのタイミングで一気に切り替わる可能性もあるので、準備はしておいた方が良いでしょう。

C3604の機械的性質

JIS H3250 「銅及び銅合金の棒」によるC3604の機械的性質を下記に示します。

【C3604の機械的性質】

C3604BE-F、C3604BD-F
(B:棒、製法:E:引き抜き、D:押出し、質別:F:伸銅のまま)

引張強さ[MPa] 335以上
耐力[MPa]
伸び[%]
ブリネル硬さ[HBW]
ビッカース硬さ[HV] 80以上

C3604の許容応力

JIS B8265 「圧力容器の構造-一般事項」に記載された許容引張応力は下記のとおりです。

温度(℃) ~-40 75 100 125 150 175 200
許容応力(N/mm2) 84 84 84 71 68 37 18

C3604の物理的性質

C3604の物理的性質は下表のとおりです。

【C3604の物理的性質】

条件 物性値
密度[g/cm3] 8.5
比重 8.5
融点[K] 液相/固相 900/885
比熱[J/(g・K)] 377
熱伝導度[W/(m・K)] 20℃ 117
縦弾性係数(ヤング率)[GPa] 96
横弾性係数[GPa] 36
ポアソン比 0.32
線膨張係数[10-6/K] 20~300℃ 20.5
導電率[%IACS] 20℃ 26
体積抵抗率[10-3μΩ・m] 66.3

C3604の成分

JIS H3250 「銅及び銅合金の棒」では成分は下記のとおり規定されています。

2021年版で、Fe+Sn(不純物)の量が少なくなり、微量成分のNi、Asの量が新たに規定されました。

【C3604の化学成分[%]】

元素 比率 %
Cu 57.0~61.0
Pb 1.80~3.70
Fe 0.50以下
Sn Fe+Sn=0.80以下
Zn 残部
Ni 0.20以下
As 0.02以下

C3604まとめ

C3604は、切削加工で使用する材料のファーストチョイスですが、今後はどこかのタイミングで非鉛黄銅材に移行するものと思われます。新規の部品でしたら、非鉛黄銅材の適用も考慮すべきと思います。

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DD
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機械設計の仕事をしているエンジニアのDDと申します。
技術士(機械)の資格をもっています。
このブログでは、機械技術から日常の中の科学まで、私が興味を持ったことをできるだけ解りやすく紹介しています!

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