C1220はJISに規定された純銅の一種で、りん脱酸銅と呼ばれる材料です。
耐食性に優れ、溶接性・ろう付け性も良好で、銅配管や熱交換器などの用途に広く使用されています。
C1220の特徴と性質
C1220は一般的に次のような特徴があります。
- 優れた耐食性:水・蒸気・湿潤環境でも腐食に強い。
- 良好な溶接性・ろう付け性:ガス溶接やアーク溶接に適応。
- 加工性が高い:冷間加工・熱間加工がしやすい。
- 電気伝導性は純銅よりやや劣る:リンの添加による影響。
C1201との比較
リン脱酸銅には、C1201もあります。C1201の方がリンの量が少なく電気伝導率は高いため、電気部品に用いられます。
加工性はC1220の方が良く、銅パイプなどの伸銅品に多く使用されています。
C1220の用途例
C1220はその溶接性・耐食性の高さから、配管や熱交換器を中心に多用途で使われています。
- 冷媒配管、給湯管
- 熱交換器、冷却器
- ボイラー部品、配電盤内配管
- 電子機器の構造材、端子部品
- 建築用銅管
C1220の化学成分(JIS H3100準拠)
C1220の主な化学成分は以下の通りです。
元素 | 含有量(%) |
---|---|
銅(Cu) | ≧99.90 |
リン(P) | 0.015~0.040 |
その他不純物 | ≦0.05 |
※C1201と同様、酸素をほとんど含まず、水素脆化を起こしません。
C1220の質別ごとの機械的性質(JIS H3100準拠)
C1220には用途や加工性に応じてさまざまな質別が規定されています。
以下に、代表的な質別の性質を一覧で示します。
質別記号 | 厚さの区分 (mm) |
引張強さ (N/mm²) | 伸び (%) | 特徴・用途例 |
---|---|---|---|---|
O | 0.1以上 0.15未満 | 195以上 | 20以上 | 成形性が高く、配管・曲げ加工に適する。 |
0.15以上 0.3未満 | 30以上 | |||
0.3以上 30以下 | 35以上 | |||
1/2H | 0.1以上 0.15未満 | 235~315 | - | 強度と加工性のバランスが良い。 |
0.15以上 0.3未満 | 10以上 | |||
0.3以上 20以下 | 245~315 | 15以上 | ||
H | 275以上 | – | 強度を求める構造部品に使用。 |
- 上記は板材の特性です。厚さによって若干の差異があります。数値は代表値です。
- 管材としての流通が非常に多く、サイズも豊富です。
C1220の物理的性質(物性値)
C1220は脱酸銅としての標準的な物性を持ち、以下のような特性を示します。
項目 | 数値 | 単位 | 備考 |
---|---|---|---|
密度 | 8.94 | g/cm³ | 純銅と同等 |
比重 | 8.94 | - | |
融点 | 1084 | ℃ | 純銅と同等 |
熱伝導率 | 約330 | W/(m・K) | 純銅よりやや低い |
電気伝導率(20℃) | 約85~90 | %IACS | リン含有により低下 |
線膨張係数(20~300℃) | 16.5×10⁻⁶ | /K | 熱膨張は中程度 |
ヤング率 | 約110 | GPa | 弾性率は中程度 |
ポアソン比 | 約0.34 | – | 一般的な金属と同程度 |
C1220と環境負荷物質・規制対応
◆ C1220に含まれる有害物質(JISに準拠)
元素 | 含有量上限 | 備考 |
---|---|---|
鉛(Pb) | 含まれない | RoHS指令に完全適合。 |
カドミウム(Cd) | 含まれない | 環境規制に完全適合。 |
水銀(Hg) | 含まれない | - |
六価クロム(Cr⁶⁺) | 含まれない | - |
PBB/PBDE | 含まれない | 難燃剤不使用。 |
C1220は、鉛やカドミウムなどの有害物質を含まないため、RoHS2指令(EU)、ELV指令(自動車向け)などに適合する環境対応型材料です。
建築用銅管や熱交換器など、環境配慮型製品にも適した材料です。
機械設計者がC1220を使う際の注意点とトラブル事例
C1220は信頼性の高い材料ですが、設計・使用条件によってはトラブルの原因になることがあります。
以下に注意点と実際に報告される問題例を整理します。
◆ 設計上の注意点
項目 | 内容 | 解説・対策 |
---|---|---|
電気伝導性の低下 | 純銅より電気伝導率が低い | 高電流用途ではC1100、C1020を推奨 |
強度不足 | 高荷重・構造用途には不向き | 青銅や黄銅等、他材料への変更を検討 |
高温影響 | リン含有により高温特性に影響 | 使用温度に応じた材質選定 |
◆ 実際のトラブル事例と対策
事例 | 発生状況 | 原因 | 対策 |
---|---|---|---|
電流負荷部の発熱 | 電気回路での温度上昇 | 電気伝導性不足 | C1100など高導電材への変更 |
配管部の変形 | 高圧流体での変形 | 強度不足 | 配管設計の見直し、または厚肉管使用 |
高温はんだ付け時の不具合 | 接合部の脆化 | リンの影響による | 加熱条件の最適化、適切なフラックス選定 |
まとめ
C1220は、高い耐食性と溶接性を兼ね備えた脱酸銅材料です。
特に配管・熱交換器用途で広く使用され、RoHSなどの環境規制にも適合する信頼性の高い素材です。
一方で電気伝導性や強度には注意が必要であり、用途に応じた適切な材質選定が重要です。