C2801とは?用途や強度や比重と耐食性もまとめ

C2801はJISに規定された黄銅(真鍮)の一種で、60:40黄銅とも呼ばれる、高強度型の銅合金です。

銅60%、亜鉛40%の組成を持ち、C2680、C2600、C2700よりも高い強度耐摩耗性を持ち、構造材として用いられます。

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C2801の特徴と性質

C2801は一般的に次のような特徴があります。

  • 高強度・高剛性:Cu-Zn系合金の中でも非常に高い強度。
  • 耐摩耗性が良好:摺動部品や機械構造材に適する。
  • 加工性はやや劣る:冷間加工には制限があり、熱間加工が主。
  • 耐食性は中程度:標準環境では良好、特殊環境では腐食対策が必要。

 

C2801の用途例

C2801はその高い強度と剛性から、特に機械的負荷の高い部品に使用されています。5円玉の材料として用いられています。

板材と条材が広く流通しています。棒材は、ほとんど流通していません。

  • 機械構造部品、摺動部品
  • 高圧配管、バルブ部品
  • 建築用の高耐久金物
  • 船舶・重機用部材
  • 装飾用途(重厚感ある外観)

C2801

C2801の化学成分(JIS H3100準拠)

C2801の主な化学成分は以下の通りです。銅:亜鉛=60:40の合金で、黄銅3種と分類されます。

元素 含有量(%)
銅(Cu) 59.0~62.0
亜鉛(Zn) 残部
鉛(Pb) 0.10以上
鉄(Fe) 0.07以上

※JIS H3100に規定される標準組成です。

C2801の質別ごとの機械的性質(JIS H3100準拠)

C2801は加工硬化によって高い強度が得られますが、加工性は他の黄銅よりやや低下します。

以下に、代表的な質別の性質を一覧で示します。

質別記号 径または対辺距離(mm) 引張強さ (N/mm²) 伸び (%)
O 0.30以上 1.0未満 325以上 35以上
1.0以上 30以下 40以上
1/2H 0.30以上 20以下 410~490 15以上
H 0.30以上 10以下 470以上

冷間加工性は他の黄銅材より劣るため、熱間鍛造・圧延に適します。

C2801の物理的性質(物性値)

C2801は以下のような物理特性を持ちます。類似材質の値なので参考に留めてください。

項目 数値 単位
密度 約8.4 g/cm³
熱伝導率 約110 W/(m·K)
電気伝導率(20℃) 約26 %IACS
線膨張係数(20~300℃) 21.0×10⁻⁶ /K
ヤング率 約105 GPa
ポアソン比 約0.34

C2801と環境負荷物質・規制対応

◆ C2801に含まれる有害物質(JISに準拠)

元素 含有量上限 備考
鉛(Pb) ≦0.10% RoHS指令の対象物質(許容上限:0.1%以内)
カドミウム(Cd) 含まれない 環境規制に適合
水銀(Hg) 含まれない
六価クロム(Cr⁶⁺) 含まれない
PBB/PBDE 含まれない 難燃剤不使用

C2801は鉛などの有害物質含有量が少なく、RoHS2指令(EU)、ELV指令(自動車向け)などの環境規制に適合する材料です。

再生材を用いる際は、鉛や鉄の含有量に注意が必要です。

機械設計者がC2801を使う際の注意点とトラブル事例

C2801は高強度材料として有用ですが、加工性や腐食性に注意が必要です。

以下に設計時の注意点とトラブル事例をまとめます。

◆ 設計上の注意点

項目 内容 解説・対策
加工性の制約 冷間加工には適さない 熱間鍛造・圧延などを用い、適切な加工法を選択
応力腐食割れ(SCC) 高応力・湿潤環境でのリスク 表面処理や応力除去焼鈍を実施
脱亜鉛腐食 長期間水中使用で劣化の懸念 防食対策材の使用、または適切な環境で使用

◆ 実際のトラブル事例と対策

事例 発生状況 原因 対策
バルブ部品の割れ 長期使用でクラック発生 応力腐食割れ 材質変更または表面コーティング
摺動部品の摩耗 高荷重での摩耗加速 熱処理不足、潤滑不足 熱処理、表面処理、適切な潤滑
高圧配管の腐食 水分・薬品接触により腐食進行 脱亜鉛腐食 耐脱亜鉛銅合金または防食処理

まとめ

C2801は、高い強度・剛性・耐摩耗性を備えた黄銅材料で、構造用途に広く使われています。

特に機械部品や高圧環境での使用に適しており、コストと性能のバランスに優れる材料です。

ただし加工性や腐食特性には注意が必要であり、適切な設計と使用環境の把握が重要です。

この記事を書いた人
DD
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機械設計の仕事をしているエンジニアのDDと申します。
技術士(機械)の資格をもっています。
このブログでは、機械技術から日常の中の科学まで、私が興味を持ったことをできるだけ解りやすく紹介しています!

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