C1201はJISに規定された純銅の一種で、りん脱酸銅と呼ばれる材料です。
脱酸処理にリン(P)を用いた純銅で、溶接性・耐食性に優れ、熱交換器や配管用途に適しています。
C1201の特徴と性質
C1201は一般的に次のような特徴があります。
- 耐食性が非常に高い:水・蒸気・湿潤環境でも腐食に強い。
- 溶接性・ろう付け性が良好:ガス溶接・ろう付け・アーク溶接に対応。
- 加工性に優れる:冷間・熱間加工がしやすく、曲げや伸ばし加工にも適する。
- 電気伝導性はやや劣る:リン添加のため、純銅より導電性はやや低下します。
C1220との比較
リン脱酸銅には、C1220もあります。C1201の方がリンの量が少なく電気伝導率は高くなります。
加工性はC1220の方が良く、銅パイプなどに用いられます。
C1201の用途例
C1201はその溶接性・耐食性の高さから、特に配管部品や熱交換器で多く使われます。
- 熱交換器、冷却器
- 給水管、冷媒配管
- ボイラー部品、ガス配管
- 電子部品の端子材
- 化学機器の銅パーツ
C1201の化学成分(JIS H3100準拠)
C1201の主な化学成分は以下の通りです。
元素 | 含有量(%) |
---|---|
銅(Cu) | ≧99.90 |
リン(P) | 0.004~0.014 |
その他不純物 | ≦0.05 |
※脱酸処理によって酸素含有が極めて低く、水素脆化を防止します。
C1201の質別ごとの機械的性質(JIS H3100準拠)
C1201には用途や加工性に応じてさまざまな質別が規定されています。
以下に、代表的な質別の性質を一覧で示します。
質別記号 | 厚さの区分 (mm) |
引張強さ (N/mm²) | 伸び (%) | 特徴・用途例 |
---|---|---|---|---|
O | 0.1以上 0.15未満 | 195以上 | 20以上 | 軟質で成形性が高く、精密加工に適する。 |
0.15以上 0.3未満 | 30以上 | |||
0.3以上 30以下 | 35以上 | |||
1/2H | 0.1以上 0.15未満 | 235~315 | - | 適度な強度と加工性を持つ。 |
0.15以上 0.3未満 | 10以上 | |||
0.3以上 20以下 | 245~315 | 15以上 | ||
H | 275以上 | – | 高強度用途。精密部品などに使用。 |
- 上記は板材の特性です。厚さによって若干の差異があります。数値は代表値です。
- 棒材・線材では、加工条件によって物性が変化します。
C1201の物理的性質(物性値)
C1201は脱酸銅の標準的な物性を持ち、以下のような特性を示します。
項目 | 数値 | 単位 | 備考 |
---|---|---|---|
密度 | 8.94 | g/cm³ | 純銅と同等 |
比重 | 8.94 | - | |
融点 | 1084 | ℃ | 純銅と同等 |
熱伝導率 | 約330 | W/(m・K) | 純銅よりやや低い |
電気伝導率(20℃) | 約85~90 | %IACS | リン含有により低下 |
線膨張係数(20~300℃) | 16.5×10⁻⁶ | /K | 熱膨張は中程度 |
ヤング率 | 約110 | GPa | 弾性率は中程度 |
ポアソン比 | 約0.34 | – | 一般的な金属と同程度 |
C1201と環境負荷物質・規制対応
◆ C1201に含まれる有害物質(JISに準拠)
元素 | 含有量上限 | 備考 |
---|---|---|
鉛(Pb) | 含まれない | RoHS指令に完全適合。 |
カドミウム(Cd) | 含まれない | 環境規制に完全適合。 |
水銀(Hg) | 含まれない | - |
六価クロム(Cr⁶⁺) | 含まれない | - |
PBB/PBDE | 含まれない | 難燃剤不使用。 |
C1201は、鉛やカドミウムなどの有害物質を含まないため、RoHS2指令(EU)、ELV指令(自動車向け)などに適合する環境対応型材料です。
特に水回りや熱交換器用途で多く使われ、信頼性が高い材料です。
機械設計者がC1201を使う際の注意点とトラブル事例
C1201は使いやすい材料ですが、設計・使用条件によってはトラブルの原因になることがあります。
以下に注意点と実際に報告される問題例を整理します。
◆ 設計上の注意点
項目 | 内容 | 解説・対策 |
---|---|---|
導電性の低下 | 純銅より電気伝導率が低い | 高導電性が求められる用途ではC1020、C1100を検討 |
強度不足 | 構造材としては不向き | 強度が必要な箇所は青銅や黄銅へ変更 |
リン含有の影響 | 一部の高温用途で問題 | 使用温度範囲に注意し、リン影響を確認 |
◆ 実際のトラブル事例と対策
事例 | 発生状況 | 原因 | 対策 |
---|---|---|---|
高電流部品の発熱 | 電流負荷で温度上昇 | 導電性不足 | C1020、C1100へ材質変更 |
構造変形 | 荷重下での変形 | 強度不足 | 青銅(C5191など)へ変更 |
高温ろう付け時の変質 | 変色・脆化 | リンの高温影響 | 加熱条件を適正化または別材検討 |
まとめ
C1201は、優れた耐食性と溶接性を持つ脱酸銅材料です。
熱交換器や配管など、水・蒸気環境に強い用途に適し、RoHSなどの環境規制にも対応した信頼性の高い素材です。
一方で電気伝導性や強度面での制約があり、用途に応じた材料選定が重要となります。