C2700はJISに規定された黄銅(真鍮)の一種で、65:35黄銅とも呼ばれる、銅と亜鉛の合金です。
C2600(黄銅1種)より亜鉛含有量がやや高く、強度に優れた材料で、幅広い工業用途に使用されています。
C2700の特徴と性質
C2700は一般的に次のような特徴があります。
- 高い強度:C2600よりも機械的強度が高く、構造材にも使用可能。
- 良好な加工性:冷間加工・熱間加工ともに対応可能で、冷間鍛造や転造にも適する。
- 耐食性が良好:一般環境では腐食に強く、耐久性が高い。
- コストパフォーマンスに優れる:経済性と性能のバランスが良い。
C2700の用途例
C2700はその強度と加工性の高さから、多くの構造部品や機能部品に使用されています。
- 水栓金具、建築金物
- 家電部品、機械構造部品
- 自動車部品、内装金物
- 端子、コネクター、電気接点
C2700の化学成分(JIS H3250準拠)
C2700の主な化学成分は以下の通りです。銅:亜鉛=65:35の合金で、黄銅2種と分類されます。
元素 | 含有量(%) |
---|---|
銅(Cu) | 63.0~67.0 |
亜鉛(Zn) | 残部(約31.5~37) |
鉛(Pb) | ≦0.05 |
鉄(Fe) | ≦0.10 |
アルミニウム(Al) | ≦0.02 |
マンガン(Mn) | ≦0.02 |
ニッケル(Ni) | ≦0.02 |
※JIS H3250(銅及び銅合金の棒)規定に準拠。JIS H3100(銅及び銅合金の板及び条)には規定が有りません。
C2700の質別ごとの機械的性質(JIS H3250準拠)
C2700には用途や加工性に応じてさまざまな質別が規定されています。
以下に、代表的な質別の性質を一覧で示します。
質別記号 | 径または対辺距離(mm) | 引張強さ (N/mm²) | 伸び (%) |
---|---|---|---|
O | 2以上 6未満 | 295以上 | 20以上 |
6以上 75以下 | 40以上 | ||
1/2H | 2以上 6未満 | 355以上 | 10以上 |
6以上 50以下 | 20以上 | ||
H | 2以上 20以下 | 410以上 | - |
上記は棒材の特性です。
C2700の物理的性質(物性値)
C2700は黄銅材としてのバランスが良く、以下のような物理特性を持ちます。
項目 | 数値 | 単位 | 備考 |
---|---|---|---|
密度 | 約8.47 | g/cm³ | Cu-Zn合金標準値 |
融点 | 約880~900 | ℃ | C2600よりやや低い |
熱伝導率 | 約115 | W/(m·K) | 黄銅系としては良好 |
電気伝導率(20℃) | 約27 | %IACS | 中程度 |
線膨張係数(20~300℃) | 20.9×10⁻⁶ | /K | 標準的 |
ヤング率 | 約103 | GPa | 標準的 |
ポアソン比 | 約0.34 | – | 一般金属と同等 |
C2700と環境負荷物質・規制対応
◆ C2700に含まれる有害物質(JISに準拠)
元素 | 含有量上限 | 備考 |
---|---|---|
鉛(Pb) | ≦0.05% | RoHS指令の対象物質(許容上限:0.1%以内) |
カドミウム(Cd) | 含まれない | 環境規制に適合 |
水銀(Hg) | 含まれない | - |
六価クロム(Cr⁶⁺) | 含まれない | - |
PBB/PBDE | 含まれない | 難燃剤不使用 |
C2700は鉛などの有害物質含有量が少なく、RoHS2指令(EU)、ELV指令(自動車向け)などの環境規制に適合しやすい材料です。
再生材を使用する場合は、含有物質の管理に留意する必要があります。
機械設計者がC2700を使う際の注意点とトラブル事例
C2700は強度と加工性のバランスが良い材料ですが、使用環境によってはトラブルが発生することがあります。
以下に注意点と実際の事例を整理します。
◆ 設計上の注意点
項目 | 内容 | 解説・対策 |
---|---|---|
応力腐食割れ(SCC) | 高応力・湿潤環境でSCCの懸念 | アンモニア性環境ではコーティングまたはC6801などの使用検討 |
脱亜鉛腐食 | 長期間水接触で脱亜鉛のリスク | 水道用途では脱亜鉛対策品を使用 |
電気伝導性の低下 | 電気用途では導電率に注意 | 高導電が必要な場合はC1100を使用 |
◆ 実際のトラブル事例と対策
事例 | 発生状況 | 原因 | 対策 |
---|---|---|---|
水道金具の腐食 | 長期間の使用後に脆化 | 脱亜鉛腐食 | 耐脱亜鉛黄銅への変更、表面処理 |
電気部品の加熱 | 接点部が発熱 | 導電性不足 | C1020やC1100など高導電材料使用 |
接合部のクラック | 曲げ応力による割れ | 応力腐食割れ | 応力除去焼鈍、材質変更 |
まとめ
C2700は、優れた強度と加工性を持つ汎用性の高い黄銅材料です。
建築金物、自動車部品、電気機器など、多様な分野で使用され、コストと性能のバランスに優れた材料です。
ただし応力腐食割れや脱亜鉛腐食には注意が必要であり、使用条件に応じた適切な材料選定が求められます。