C2600とは?用途や強度や比重と耐食性もまとめ

C2600はJISに規定された黄銅(真鍮)の一種で、赤黄銅とも呼ばれる、銅と亜鉛の合金です。

銅約70%、亜鉛約30%の組成を持ち、優れた加工性と適度な強度から、広範囲な工業製品に用いられています。

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C2600の特徴と性質

C2600は一般的に次のような特徴があります。

  • 優れた加工性:冷間加工にも熱間加工にも適し、曲げ・絞り加工性が高い。
  • 良好な展延性:薄板や複雑形状の成形にも対応可能。
  • 経済性が高い:純銅に比べて安価で、量産品に適する。
  • 耐食性・電気伝導性は中程度:純銅ほどではないが、日常用途には十分。

 

C2600の用途例

C2600はその加工性とコストパフォーマンスの高さから、各種産業で広く使用されています。

  • 建築用金物、装飾部品
  • 家電製品の部品、機構部材
  • 電気・電子部品(端子・コネクター)
  • 楽器パーツ(ホルン、サックスなど)
  • 自動車内装部品

C2600

C2600の化学成分(JIS H3100準拠)

C2600の主な化学成分は以下の通りです。銅:亜鉛=70:30の合金で、黄銅1種と分類されます。

元素 含有量(%)
銅(Cu) 68.5~71.5
亜鉛(Zn) 残部(約28.5~31.5)
鉛(Pb) ≦0.05
鉄(Fe) ≦0.05

※JIS H3100規定の冷間圧延材・熱間圧延材に準拠。

C2600の質別ごとの機械的性質(JIS H3100準拠)

C2600には用途や加工性に応じてさまざまな質別が規定されています。加工硬化によってそれぞれの機械的性質になるよう調整されています。

以下に、代表的な質別の性質を一覧で示します。

質別記号 厚さの区分(mm) 引張強さ (N/mm²) 伸び (%)
O 0.1以上 0.3未満 275以上 35以上
0.3以上 30以下 40以上
1/2H 0.1以上 0.3未満 355~450 23以上
0.3以上 20以下 355~440 28以上
H 0.1以上 10以下 410~540
  • 上記は板材の特性です。厚さによって若干の差異があります。数値は代表値です。
  • 線材・棒材の場合、加工条件により物性が変化します。

C2600の物理的性質(物性値)

C2600は黄銅の中でも加工性と強度のバランスに優れ、以下のような物理特性を持ちます。

項目 数値 単位 備考
密度 約8.53 g/cm³ 純銅より軽量
融点 約900~940 Cu-Zn合金の標準的範囲
熱伝導率 約120 W/(m·K) 純銅の約1/3
電気伝導率(20℃) 約28 %IACS 導電性は銅より劣る
線膨張係数(20~300℃) 20.5×10⁻⁶ /K 熱膨張はやや大きい
ヤング率 約103 GPa 弾性率は中程度
ポアソン比 約0.34 標準的

C2600と環境負荷物質・規制対応

◆ C2600に含まれる有害物質(JISに準拠)

元素 含有量上限 備考
鉛(Pb) ≦0.05% RoHS指令の対象物質(許容上限:0.1%以内)
カドミウム(Cd) 含まれない 環境規制に完全適合
水銀(Hg) 含まれない
六価クロム(Cr⁶⁺) 含まれない
PBB/PBDE 含まれない 難燃剤不使用

C2600は鉛などの有害物質の含有が少なく、RoHS2指令(EU)、ELV指令(自動車向け)などに適合しやすい材料です。

再生材を使用する場合は、含有物質の管理を徹底する必要があります。

機械設計者がC2600を使う際の注意点とトラブル事例

C2600は加工性と経済性に優れた材料ですが、設計・使用条件によってはトラブルの原因になることがあります。

以下に注意点と実際に報告される問題例を整理します。

◆ 設計上の注意点

項目 内容 解説・対策
応力腐食割れ(SCC) 湿潤環境でSCCが発生することがある 高湿・アンモニア環境では脱亜鉛黄銅への変更を検討
脱亜鉛腐食 長期間の水接触で亜鉛が溶出しやすい 給水用途ではC2700など脱亜鉛対策品を使用
導電性の過信 純銅と比較して電気伝導性は低い 電気用途には断面積の調整や銅材の選定が必要

◆ 実際のトラブル事例と対策

事例 発生状況 原因 対策
装飾部品の変色 空気中で黒ずみ 酸化・硫化反応 表面に防錆処理、クリア塗装
配管部の漏れ 長期使用でクラック発生 応力腐食割れ 環境対応材へ変更、表面処理
接点部の発熱 電流負荷時に温度上昇 導電性不足 C1100など高導電材の使用

まとめ

C2600は、高い加工性と経済性を兼ね備えた汎用性の高い黄銅材料です。

装飾部品や電気機器、建築金物など幅広い用途に使用されており、コストパフォーマンスの良さが魅力です。

一方で応力腐食割れや脱亜鉛腐食には注意が必要であり、使用環境に応じた材質選定が重要です。

この記事を書いた人
DD
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機械設計の仕事をしているエンジニアのDDと申します。
技術士(機械)の資格をもっています。
このブログでは、機械技術から日常の中の科学まで、私が興味を持ったことをできるだけ解りやすく紹介しています!

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