C1020はJISに規定された純銅の一種で、無酸素銅と呼ばれる高純度銅材料です。
99.96%以上の銅純度を持ち、優れた電気伝導性と耐熱性を誇り、真空機器や電子部品に使用されます。
C1020の特徴と性質
C1020は一般的に次のような特徴があります。
- 非常に高い電気・熱伝導性:IACS基準で101%の導電率、熱伝導性も非常に高い。
- 耐食性に優れる:酸化皮膜形成により大気中でも高い耐食性を発揮。
- 高純度で不純物が極めて少ない:還元性雰囲気下でも性能が安定。
- 真空用途に適応:水素脆化を起こさないため真空機器に使用可能。
C1020の用途例
C1020はその高純度・導電性・耐食性から、精密機器や高信頼性が求められる部品に使用されます。
- 真空機器部品、電子管
- 高周波導体、マイクロ波部品
- 電気接点、導体材料
- 理化学機器、半導体製造装置
- 工芸品、精密装飾部品
C1020の化学成分(JIS H3100準拠)
C1020の主な化学成分は以下の通りです。
元素 | 含有量(%) |
---|---|
銅(Cu) | ≧99.96 |
酸素(O) | ≦0.001 |
その他不純物 | ≦0.04 |
※高純度化により、還元性雰囲気でも水素脆化を起こしません。
C1020の質別ごとの機械的性質(JIS H3100準拠)
C1020には用途や加工性に応じてさまざまな質別が規定されています。
以下に、板材の代表的な質別の性質を一覧で示します。
質別記号 | 厚さの区分 (mm) |
引張強さ (N/mm²) | 伸び (%) | 特徴・用途例 |
---|---|---|---|---|
O | 0.1以上 0.15未満 | 195以上 | 20以上 | 軟質で成形性が高く、深絞りや精密加工に適する。 |
0.15以上 0.3未満 | 30以上 | |||
0.3以上 30以下 | 35以上 | |||
1/2H | 0.1以上 0.15未満 | 235~315 | - | 適度な強度と加工性を持つ。 |
0.15以上 0.3未満 | 10以上 | |||
0.3以上 20以下 | 245~315 | 15以上 | ||
H | 275以上 | – | 高強度用途。精密部品などに使用。 |
- 上記は板材の特性です。厚さによって若干の差異があります。数値は代表値です。
- 棒材・線材では、加工条件によって物性が変化します。
C1020の物理的性質(物性値)
C1020は純銅の中でも最高クラスの特性を持ち、以下のような物理特性を示します。
項目 | 数値 | 単位 | 備考 |
---|---|---|---|
密度 | 8.94 | g/cm³ | 純銅の標準的な値 |
比重 | 8.94 | - | |
融点 | 1084 | ℃ | 高融点で耐熱性がある |
熱伝導率 | 約390 | W/(m・K) | 金属中でトップクラス |
電気伝導率(20℃) | 101 | %IACS | 標準より高い導電性 |
線膨張係数(20~300℃) | 16.5×10⁻⁶ | /K | 熱膨張は中程度 |
ヤング率 | 約110 | GPa | 弾性率は中程度 |
ポアソン比 | 約0.34 | – | 一般的な金属と同程度 |
C1020と環境負荷物質・規制対応
◆ C1020に含まれる有害物質(JISに準拠)
元素 | 含有量上限 | 備考 |
---|---|---|
鉛(Pb) | 含まれない | RoHS指令の対象物質。完全フリー。 |
カドミウム(Cd) | 含まれない | 環境規制に完全適合。 |
水銀(Hg) | 含まれない | - |
六価クロム(Cr⁶⁺) | 含まれない | - |
PBB/PBDE | 含まれない | 難燃剤としても使用されない。 |
C1020は、鉛やカドミウムなどの有害物質を含まないため、RoHS2指令(EU)、ELV指令(自動車向け)などに適合する環境にやさしい材料です。
高純度材料であるため、特に半導体・医療・精密機器分野での環境要求にも対応可能です。
機械設計者がC1020を使う際の注意点とトラブル事例
C1020は非常に優れた性能を持ちますが、設計・使用条件によってはトラブルの原因になることがあります。
以下に注意点と実際に報告される問題例を整理します。
◆ 設計上の注意点
項目 | 内容 | 解説・対策 |
---|---|---|
強度不足 | 純銅のため、機械的強度が低い | 構造部品には適さず、他合金(青銅、黄銅)を検討 |
摩耗 | 柔らかいため、摺動部では摩耗しやすい | 表面硬化処理または、接触材の見直しが必要 |
高コスト | 高純度のため、一般銅より価格が高い | 用途に応じてC1100などとのコスト比較を行う |
◆ 実際のトラブル事例と対策
事例 | 発生状況 | 原因 | 対策 |
---|---|---|---|
高負荷部品の変形 | 荷重下での塑性変形 | 強度不足 | リン青銅などへ材質変更 |
コスト過剰 | 大量使用によるコスト増加 | 高純度による材料費高 | 用途ごとにC1100などを代替検討 |
摩耗による接触不良 | 繰り返し接触で導通不良 | 柔らかさによる接触劣化 | 表面硬化または貴金属メッキ |
まとめ
C1020は、電気部品や熱伝導性などを生かした用途に向く純銅材料です。
真空機器や精密機器、半導体分野などに適しており、RoHSなどの環境規制にも対応した高性能材です。