C3771はJISに規定された鍛造用の快削黄銅で、耐脱亜鉛腐食性と加工性に優れた銅合金です。
亜鉛の含有比率が高く、強度が高い上に、鍛造加工に適しており、水道金具などの耐久部品に広く使われています。
C3771の特徴と性質
C3771は一般的に次のような特徴があります。
- 熱間鍛造性に優れる:高亜鉛含有により塑性加工がしやすい。
- 耐脱亜鉛腐食性が良好:水中での腐食に強く、長寿命。
- 適度な快削性:鉛含有により、切削加工も可能。
- 高強度:C2600、C2700に比べて強度が高く、構造部材に適する。
C3771の用途例
C3771はその鍛造性と耐腐食性の高さから、特に水まわりや圧力部品に多用されています。
- 水道金具、バルブ部品
- 配管継手、ジョイント
- ガス機器部品
- 自動車の冷却系部品
- 油圧機器部品
C3771の化学成分(JIS H3250準拠)
C3771の主な化学成分は以下の通りです。高亜鉛・鉛含有により、鍛造性・切削性を確保しています。
元素 | 含有量(%) |
---|---|
銅(Cu) | 57.0~61.0 |
亜鉛(Zn) | 残部 |
鉛(Pb) | 1.0~2.5 |
鉄(Fe) | ≦0.5 |
錫(Sn) | Fe+Sn≦1.00 |
ニッケル(Ni) | ≦0.20 |
ヒ素(As) | ≦0.02 |
※JIS H3250(銅及び銅合金の棒)規定
C3771の機械的性質(鍛造品として)
C3771の棒材の標準的な機械的性質は下記の通りです。鍛造加工の場合の機械的性質は、製品形状や加工温度などによって性質が決定されるため下記は目安となります。
項目 | 数値 |
---|---|
引張強さ(N/mm²) | 315以上 |
伸び(%) | 15以上 |
鍛造後に必要に応じて切削加工、熱処理が行われます。
C3771の物理的性質(物性値)
C3771は快削・鍛造性のバランスが取れた黄銅で、以下のような物理特性を持ちます。
項目 | 数値 | 単位 | 備考 |
---|---|---|---|
密度 | 約8.4~8.5 | g/cm³ | 鉛含有によるやや高密度 |
融点 | 約880 | ℃ | Cu-Zn系合金としては低め |
熱伝導率 | 約105 | W/(m·K) | 標準的 |
電気伝導率(20℃) | 約22 | %IACS | 電気用途には不向き |
線膨張係数(20~300℃) | 20.5×10⁻⁶ | /K | 熱膨張は標準 |
ヤング率 | 約100 | GPa | 弾性率は中程度 |
ポアソン比 | 約0.34 | – | 標準 |
C3771と環境負荷物質・規制対応
◆ C3771に含まれる有害物質(JISに準拠)
元素 | 含有量上限 | 備考 |
---|---|---|
鉛(Pb) | 1.0~2.5% | RoHS指令の例外規定対象(RoHS適合鍛造用材もあり) |
カドミウム(Cd) | 含まれない | 環境規制に適合 |
水銀(Hg) | 含まれない | - |
六価クロム(Cr⁶⁺) | 含まれない | - |
PBB/PBDE | 含まれない | 難燃剤不使用 |
C3771は鉛を含むため、RoHS指令等により制限がありますが、水道用途など一部において例外適用があります。環境対応が求められる場合は、鉛フリー材(C6801など)の選定が必要です。
機械設計者がC3771を使う際の注意点とトラブル事例
C3771は鍛造・耐食性に優れる一方、使用環境や加工後の特性に注意が必要です。
◆ 設計上の注意点
項目 | 内容 | 解説・対策 |
---|---|---|
鉛含有による制約 | 環境規制対象となる場合あり | RoHS適合が必要な場合は鉛フリー黄銅(C6932など)を使用 |
冷間加工の制限 | 主に熱間鍛造用 | 必要な寸法精度は二次加工で対応 |
応力腐食割れの懸念 | 特定環境下でSCC発生 | 焼鈍処理や表面保護対策が必要 |
◆ 実際のトラブル事例と対策
事例 | 発生状況 | 原因 | 対策 |
---|---|---|---|
水道部品の鉛溶出 | 水接触での鉛溶出 | 鉛含有 | 鉛フリー材の使用またはコーティング |
鍛造部品の割れ | 加工後の冷却不良 | 内部応力残留 | 焼鈍処理の徹底 |
接合部の不具合 | ろう付け不良 | 鉛の影響 | 機械的接合または他材検討 |
まとめ
C3771は、優れた鍛造性と耐脱亜鉛腐食性を持つ快削黄銅で、水道金具や構造部品に最適な材料です。
高い強度と加工性を持ちながら、鉛含有による環境規制や接合性に留意し、適材適所での使用が求められます。