SUS440Cは、マルテンサイト系ステンレス鋼の中では最も高強度で、高い強度や硬度が必要な用途に使用されています。
ここでは、SUS440Cの特徴や詳細な性質についてまとめました。
SUS440Cとは?
まずは、SUS440Cの特徴と機械部品に適用する場合の注意事項などについてご説明します。
マルテンサイト系ステンレス鋼に共通する特徴や使い方などについてはこちらをご覧ください。
SUS440Cの用途
SUS440Cは、焼入れ焼戻しにてHRC60近い硬度にでき、強度、硬度、耐摩耗性に優れています。
この特徴により、ベアリング用硬球、軸受、ノズル、刃物、ゲージなどに使用されます。
SUS440CのJIS規格
SUS440Cは、下記のJISで規定されています。
「JIS G4303 ステンレス鋼棒」
「JIS G4308 ステンレス鋼線材」
「JIS G4309 ステンレス鋼線」
SUS440Cの板材の規定はJISに有りませんが、市場には流通しています。(炭素量がSUS440Cより少ないSUS440Aの規定は有ります)
SUS440Cの機械的性質
SUS440Cの機械的性質を下記に示します。
【SUS440Cの機械的性質】
機械的性質 | 焼入焼戻し | 焼きなまし |
---|---|---|
引張強さ[MPa] | - | - |
0.2%耐力[MPa] | - | - |
伸び[%] | - | - |
絞り[%] | - | - |
シャルピー衝撃値[J/cm2] | - | - |
ブリネル硬さ[HBW] | - | 269以下 |
ブリネル硬さ[HRBS又はHRBW] | - | - |
ロックウェル硬さ[HRC] | 58以上 | 28以下 |
ビッカース硬さ[HV] | 653以上 | 284以下 |
適用寸法(径、耐辺距離又は厚さ) | 75mm以下 | - |
注:JIS G4303 ステンレス鋼棒」による。
【SUS440Cの機械的性質の例】
焼戻し温度(℃) | 引張強度(MPa) | 0.2%耐力(MPa) | 伸び(%) | ロックウェル硬さ(HRC) |
---|---|---|---|---|
焼きなまし | 758 | 448 | 14 | (HB269) |
204 | 2030 | 1900 | 4 | 59 |
260 | 1960 | 1830 | 4 | 57 |
316 | 1860 | 1740 | 4 | 56 |
371 | 1790 | 1660 | 4 | 56 |
AISI鋼種:440Cのデーター(引用元:Penn Stainless)
SUS440Cの物理的性質
SUS440Cの焼きなまし状態での物理的性質は下表のとおりです。
【SUS440Cの物理的性質】
物理的性質 | 物性値 |
---|---|
密度[g/cm3] | 7.78 |
比重 | 7.78 |
SUS440Cの成分
SUS440の化学成分は下記のとおり規定されています。
【SUS440の化学成分[%]】
元素 | 含有量 |
---|---|
C | 0.95~1.20 |
Si | 1.00以下 |
Mn | 1.00以下 |
P | 0.040以下 |
S | 0.030以下 |
Cr | 16.00 ~ 18.00 |
Niは、0.60%を超えてはならない。
(「JIS G4303 ステンレス鋼棒」による)
マルテンサイト系ステンレス鋼とは【規格・溶接・強度・磁性など】