SUS410は、マルテンサイト系ステンレス鋼の代表的な鋼種であり、強度や硬度の必要な一般部品に幅広く使用されています。
ここでは、SUS410の特徴や詳細な性質についてまとめました。
SUS410とは?
まずは、SUS410の特徴と機械部品に適用する場合の注意事項などについてご説明します。
マルテンサイト系ステンレス鋼に共通する特徴や使い方などについてはこちらをご覧ください。
SUS410の用途
SUS410の耐食性はステンレス鋼としてはさほど良くありませんが、耐食性と強度が必要な、バルブシート、ポンプシャフトなどの機械部品に使用されます。
刃物としては硬度が不足するので、食器のナイフなどの用途に限られます。
SUS410のJIS規格
SUS410は、下記のJISで規定されています。
「JIS G3446 機械構造用ステンレス鋼鋼管」
「JIS G3463 ボイラ・熱交換器用ステンレス鋼鋼管」
「JIS G3601 ステンレスクラッド鋼」
「JIS G4303 ステンレス鋼棒」
「JIS G4304 熱間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯」
「JIS G4305 冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯」
「JIS G4308 ステンレス鋼線材」
「JIS G4309 ステンレス鋼線」
「JIS G4311 耐熱鋼棒及び線材」
「JIS G4312 耐熱鋼板及び鋼帯」
「JIS G4315 冷間圧造用ステンレス鋼線」
「JIS G4317 熱間成形ステンレス鋼形鋼」
「JIS G4318 冷間仕上ステンレス鋼棒」
「JIS G4319 ステンレス鋼鍛鋼品用鋼片」
SUS410の機械的性質
SUS410の機械的性質を下記に示します。
【SUS410の機械的性質】
機械的性質 | 焼入焼戻し | 焼きなまし |
---|---|---|
引張強さ[MPa] | 540以上 | 440以上 |
0.2%耐力[MPa] | 345以上 | 205以上 |
伸び[%] | 25以上 | 20以上 |
絞り[%] | 55以上 | - |
シャルピー衝撃値[J/cm2] | 98以上 | - |
ブリネル硬さ[HBW] | 159以上 | 201以下 |
ブリネル硬さ[HRBS又はHRBW] | 84以上 | 93以下 |
ビッカース硬さ[HV] | 166以上 | 210以下 |
適用寸法(径、耐辺距離又は厚さ) | 75mm以下 | - |
注:JIS G4303 ステンレス鋼棒」による。硬さは上記のいずれか1種類を適用します。
【SUS410の機械的性質の例】
焼戻し温度(℃) | 引張強度(MPa) | 0.2%耐力(MPa) | ロックウェル硬さ(HRC) |
---|---|---|---|
204 | 1399 | 1076 | 43 |
288 | 1289 | 1022 | 40 |
316 | 1283 | 1026 | 40 |
427 | 1300 | 916 | 41 |
482 | 1063 | 845 | 41 |
538 | 1063 | 882 | 35 |
649 | 767 | 589 | 20.2 |
AISI鋼種:410のデーター(引用元:Penn Stainless)
SUS410の物理的性質
SUS410の焼きなまし状態での物理的性質は下表のとおりです。
【SUS410の物理的性質】
物理的性質 | 物性値 |
---|---|
密度[g/cm3] | 7.75 |
比重 | 7.75 |
融点[K] | 1650~1700 |
比熱[J/(g・K)] | 0.46 |
熱伝導度[W/(m・K)] | 24.9 |
縦弾性係数(ヤング率)[GPa] | 200 |
ポアソン比 | 0.3 |
線膨張係数[10-6/K] | 9.9 |
SUS410の成分
SUS410の化学成分は下記のとおり規定されています。
【SUS410の化学成分[%]】
元素 | 含有量 |
---|---|
C | 0.15以下 |
Si | 1.00以下 |
Mn | 1.00以下 |
P | 0.040以下 |
S | 0.030以下 |
Cr | 11.50 ~ 13.00 |
Niは、0.60%を超えてはならない。
(「JIS G4303 ステンレス鋼棒」による)
マルテンサイト系ステンレス鋼とは【規格・溶接・強度・磁性など】