バックアップリングの役割や使い方についてまとめました。
バックアップリングとは
バックアップリングは、Oリングなどのシール材と一緒に用いられ、圧力によるシール材のはみ出しや損傷を防止するための部品です。
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製のものが多く、適度な柔軟性、流動性により隙間を埋めて、圧力を受けることができます。
バックアップリングの役割
バックアップリングの役割は、圧力によるシール材のはみ出しや損傷を防止することです。
バックアップリングは自体には流体をシールする機能は有りません。
バックアップリング無し(低圧時) | 低圧時は流体圧によって右側に押されますが、Oリングは隙間からはみ出すことは無く、問題なくシールできます。 おおよそ4MPa以上であれば、バックアップリングの使用を考えます。 |
バックアップリング無し(高圧時) | 高圧時は流体圧によって強く右側に押され、隙間からはみ出していきます。Oリングが耐えられなくなると、Oリングが損傷し、流体が漏れ出します。 |
バックアップリング有り | Oリングよりも低圧側にバックアップリングを入れることで、隙間を無くし、Oリングのはみ出しを防止することができます。 |
バックアップリングの形状
バックアップリングの形状は、スパイラル、バイアスカット、エンドレスがあります。
形状 | スパイラル | バイアスカット | エンドレス |
形状 | |||
使用圧力・温度(JIS B2401-4) | 圧力:10MPa~20MPa (使用温度100℃を超える場合は、圧力:10MPa未満) |
圧力:10MPa~20MPa 20MPaを超えても使用可 |
圧力:25MPa以上 温度:135℃以上 |
特徴・用途 | 溝にはめやすい 高価 軸用、穴用 |
溝にはめやすい スパイラルより安価 軸用、穴用 |
溝にはめにくい 最も安価 穴用(軸に装着するには分割溝となる) |
バックアップリングの種類
JIS B2401では、以下のとおり材質と形状が規定されています。
種類 | 材料 | 色 | 形状 |
T1 | 四ふっ化エチレン樹脂 | 乳白色 | スパイラル |
T2 | 四ふっ化エチレン樹脂 | 乳白色 | バイアスカット |
T3 | 四ふっ化エチレン樹脂 | 乳白色 | エンドレス |
F1 | 充填剤入り四ふっ化エチレン樹脂 | 茶褐色 | スパイラル |
F2 | 充填剤入り四ふっ化エチレン樹脂 | 茶褐色 | バイアスカット |
F3 | 充填剤入り四ふっ化エチレン樹脂 | 茶褐色 | エンドレス |
充填剤入りは、ブロンズ(銅)が入ったものですが、使用量は多くありません。
バックアップリングの使い方
一般的な流体シールにおけるバックアップリングの使い方を説明します。
バックアップリングの要否判断
Oリングの耐圧性は、取付部のすきまとOリングの硬さによって決まります。
すきまが大きいと、Oリングのはみ出しが起こり、耐久性が低下しOリングが損傷します。
一般的な機械部品では、流体圧がおおむね4MPa以上ならバックアップリングの使用を考えたほうが良いでしょう。下記は、JIS B2401-2に規定された隙間と使用圧力の関係です。
バックアップリング形状の選定
スパイラルやバイアスカットは、切れ目があるので、JIS B2401-4でもエンドレスより低い圧力での使用が推奨されています。
装着できる限りは、エンドレスを選定した方が安全です。
エンドレスは、一体溝に装着するときは、大きく変形させる必要がりますが、変形しても圧力がかかれば馴染んで問題なく使用できます。
トラブル多発ポイント
スパイラルやバイアスカットは、端末が浮き上がり、組立時に挟んで損傷してしまうことがあります。
特に、見えないところに挿入のためのテーパー部がある場合は、損傷してもそのまま組付けてしまうリスクがあります。
これを防ぐには、組付けの様子が目視できない位置にバックアップリングを設けるのは避けて、溝に正しく入る様子を確認できるように設計しましょう。
圧力を受ける側に装着するので、Oリングとバックアップリングを逆に入れてしまうミスも有りえます。装着後に検査工程を入れるなど工程管理を工夫しましょう。