レイノルズ数って流体力学を学んだ時に最初に悩むところのような気がします。
式にすると単純なんですが、説明に偏微分方程式がでてきたりして、数学に強い人じゃないと、フムフム納得!とはなりませんよね。
ということで、レイノルズ数を感覚的に理解できるよう、私なりの理解方法をご紹介します。
レイノルズ数とは?直感的に理解する
レイノルズ数とは、
流れの乱れやすさを示す数値
って理解すると良いです。
レイノルズ数の等しい流れは、相似な流れとなります。
レイノルズ数が小さいと流れが乱れずに層流となり、
レイノルズ数が大きいと流れが乱れやすいので乱流となります。
レイノルズ数の公式
レイノルズ数の公式は下記のようになります。
$$Re== \frac{ \rho ・L・U }{ \mu } =\frac{ L・U }{ \nu } $$
Re:レイノルズ数(無次元)
ρ:密度[kg/m3]
L:代表長さ[m]
U:速度[m/s]
μ:粘度[Pa・s]
ν:動粘度[m2/s]
レイノルズ数は慣性力と粘性力の比
流体力学の教科書では、レイノルズ数とは慣性力と粘性力の比
と説明されます。分子が慣性力、分母が粘性力です。
この説明はちょっと判りにくいですよね。
慣性力で乱れようとするのを、粘性力で食い止めているようなイメージで捉えると理解しやすいと思います。
慣性力というのは、高校物理でもおなじみのF=mαのことです。
質量mは、密度×体積ですから、ρL3となります。
加速度αは、速度Uの時間(t)変化ですから、
$$ \frac{ dU }{ dt } $$
と表せます
よって、慣性力は、
$$F=mα=ρL ^{ 3 } \frac{ dU }{ dt } $$
となります。
一方、粘性力についてです。
粘性力Pは、流体のせん断変形を止める力として発生します。
面積をL2とすると、ニュートンの粘性則によって、
$$P = L ^{ 2 }\mu \frac{ dU }{ dL }$$
となります。
レイノルズ数の定義に戻って、これらの式を代入すると、速度U=dL/dtなので、
$$Re = \frac{ 慣性力 }{粘性力 } = \frac{ F }{P } = \frac{ \rho・ L ^{3 } }{ \mu・ L ^{ 2 } }・ \frac{ dU }{ dt } ・ \frac{ dL }{ dU } = \frac{ \rho・ L・U }{ \mu }$$
となります。
代表長さと速度と動粘度
粘性の有る流体が流れる時、物体表面の流速はゼロとなり、物体から離れると流速が大きくなり粘性の影響を受けにくくなります。
つまり、分子にある、代表長さLが大きいと、流体の流れが乱れやすくなります。
速度Uが上がれば慣性力が高くなり、相対的に粘性の影響が少なくなります。
広い空間の流れで、速度が速く、粘度が低いほど、粘性の影響を受けにくくなり、流体の流れは乱れやすくなります。
流体が流れる時に発生する小さな乱れ(渦)は、粘性力があれば消失しますが、粘性力が小さければしだいに大きな乱れへと発達してしまいます。
つまりレイノルズ数が高いほど、流れに乱れが発生しやすくなるわけです。
レイノルズ数とは?(補足)
代表長さは好きなように定義すれば良い
レイノルズ数を比較するときは、相似形状でなければ意味がないものになります。
レイノルズ数がある値のとき、あらゆる流れで一義的に流れの様子(層流、乱流など)が決まるものではありません。
例えば、配管内の流れでは、層流と乱流の境目である、臨界レイノルズ数はだいたい2,300~4,000位ですが、水路や飛行機の翼などでは全く桁違いの値になります。
レイノルズ数の式の中の特性長さLというのは、様々な流れで、最も扱いやすいように定義すれば良いものです。
一般的には、管内流れであれば、直径を代表長さにとり、
翼では、翼弦を代表長さにとります。
この場合、長さの方向は、管内流れでは流れに直角、翼では流れに平行です。
なので、長さをとる方向も任意です。
要は、流体の流れる空間のスケールを示す長さを代表長さとすればよいわけです。
但し、レイノルズ数は流れの様相が相似となることを示す相対的な値なので、各々が勝手に定義していたら比較ができません。
だから、上記のようにいわば”お約束”として、流れの形態によって代表長さのとり方が決められています。
レイノルズ数の計算方法
レイノルズ数の求め方についてご説明します。
レイノルズ数の計算
$$Re= \frac{ L・U }{ \nu } $$
Re:レイノルズ数
L:代表長さ[mm]
U:速度[m/s]
ν:動粘度[mm2/s]
下記に入力するとレイノルズ数が求められます。
水の動粘度についてはこちらの記事をご参照ください。
レイノルズ数の単位
レイノルズ数の単位は、無次元です。
レイノルズ数と流れの相似則
レイノルズ数の同じ流れは、力学的に相似となります。
これを、流れの相似則といいます。
流れの基本式であるナビエストークス方程式を無次元化すると、代表長さL、流速U、動粘性係数νが係数がとして、レイノルズ数Re=LU/νのかたちで残ります。
したがって、レイノルズ数の等しい流れは相似な流れとなります。
その他に慣性力と圧力の比であるマッハ数、慣性力と重力の比であるフルード数など対象としている流れに対し重要な無次元数を使用することで、評価を簡単に行うことができます。
流れの相似則を考慮すれば、大型の構造物や機械の流れに関する評価を行う際、小型の模型を使って評価することができるわけです。
例えば、代表長さが10mの機械を1mの模型で検討する際は、動粘性係数が等しい流体を使用した場合、流速を10倍にして試験をおこなうことで、評価が可能となります。
評価モデルを相似則を考慮して使用することは試験評価の際の経済性、スピードなどの面から重要です。